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「私のオリンピックは終わってしまいました」田中希実が味わったパリ五輪“絶望”からの収穫「幸せを噛み締めたい…完遂できたんじゃないかな」
posted2024/08/12 19:30
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Ryosuke Menju/JMPA
1500m準決勝を終えた田中希実はすっきりとした表情で姿を現した。
2大会連続の決勝進出は逃したが、自分の持つ力を出せたという満足感を漂わせていた。
「速いペースになると思っていた」
そう話すように、エチオピアのツェガイが400mは61秒9と速いペースで引っ張った。
1500mは少し苦手意識があると話していたが「逃げたくない」その一心で速いペースに乗り、400m63秒、800mを2分6秒7、1000mを2分38秒9で通過する。
ラスト1周の鐘が鳴ってレースが動くと田中は必死に腕を振り、なんとか上位に食らいつこうとしたが、ラストでもう一段ギアを上げきれず11番目でフィニッシュラインをまたいだ。13選手中12選手が4分を切る高速レースだった。
1500mで3年ぶりの4分切り
3分59秒70の11位。
東京五輪準決勝で出した3分59秒19にはわずかに及ばなかったが、3年ぶりの4分切りだった。
「東京の時は勝手に足が進んでいくというか、飛ぶように走ってたんですけど、今日は一歩一歩を噛み締めるように走りました」
五輪独特の雰囲気にのまれたり、浮き足立ったりしないように、一歩ずつ、自分の走りに集中した。
タイムのことを聞かれると田中は小首を傾げてこう答えた。
「ここで自己ベストが出てしまったら、五輪でしか(自己ベストを)出せない、幻の記録になってしまうと思うので、今日のタイムは今の自分にちょうどいいんじゃないかと思います」
5000mでは涙の予選落ち
自己ベストを出せなかったことが悔しいのでは、と思っていたので少し拍子抜けし、同時にこの1週間で田中の心の変化を感じた。