北口榛花の偉業「やり投げ金メダル」直後に記者が聞いた“意外な言葉”…「もう頑張れないかもと思うときも」パリの空に“答え”はあったのか？

　金メダルが確定した瞬間、北口榛花はフォームの確認をしていた。

　8月10日、20時45分過ぎ。まだ日光が差し込むスタッド・ド・フランス競技場。トラック競技最終日となった会場では、約7万人の観衆が勝者の最後の一投を待っていた。手拍子を求め、首を傾け見下ろすように目標地点を見つめる。叫び声を上げながら精一杯の力を込めて、槍を投げ放つ。前傾姿勢となり、宙を仰ぎ見る。地面に刺さった地点を確認し、両手で顔を覆いながら停止線を踏み越え、赤旗が振られる。涙を流しながら、新女王は祈るように手を合わせ、安堵の表情を見せた。

金メダルが確定した状況で最終6投目を終えた北口榛花　©Ryosuke Menju/JMPA

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シーズン開幕前、北口榛花は“答え”を探していた

　遡ること4カ月前。代表に内定し、日本にいるタイミングで行われた記者会見。今シーズンのスタートを前に、パリ五輪に関する報道陣の質問に笑顔を振りまきながら、答えていく。

「100% 以上の出来でパリを迎えられたらいいな」

　表情はいつも通り明るいが、実戦に向けての不確実さも吐露していた。

「私、練習で55mが出れば『まあまあいい』っていうラインなんですよ。試合に出て65mとか投げるタイプなので。やっている自分も、あんまりそうはしたくないですけど、本当に予想できないので、試合に臨んで1投目でやっとわかるということが多い」

決勝直前の北口榛花。1投目まで「本当の状態」はわからないままだった　©Ryosuke Menju/JMPA

　もともと練習では記録が出ないタイプ。だからこそ練習で考えを突き詰めて、試合では答え合わせを行う。その感覚をこう言語化していた。

「練習で飛ばないのはめちゃくちゃ考えて投げているからだと思うので、試合では考えるポイントを減らす。練習ではかなり気をつけたいところが10個あるとしたら、10個全部考えながら投擲するんですけど、試合になると、だいたい2、3個に減らしてやる。その分迷いもないですし、全力で投げることに集中できる感じがします」

　角度、スピード、パワー。それらを生み出す細かな身体のパーツの組み合わせ。その答えを探すように宙を何度も見つめて、言葉を紡いでいた。

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