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プロ野球PRESSBACK NUMBER
源田壮亮でも今宮健太でもなく…プロ野球“歴代No.1ショート”は誰? 元ロッテ名選手が挙げる“意外な名前”「忍者のように現れてアウトに」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byL)Hideki Sugiyama/R)JIJI PRESS
posted2024/08/10 11:01
1980年代にロッテで活躍した名ショート・水上善雄さんに「12球団No.1遊撃手」を語ってもらった
「源田(壮亮)は究極のショートです。捕る体勢に入った瞬間、アウトを確信できる。しかも、日によってプレーに差が出ない。これが最も難しいんです。『守備にスランプはない』という人もいるけど、上手くなかった人が言っているだけです(笑)。1年あれば、疲労で足が上手く運べない、肩の調子が良くない時期もある。でも、源田にはそれが見えない。若い頃と比べ、守備範囲はほんの少し狭くなっていますが、経験値が増えた分、察知力が鋭くなった。昔なら取れないアウトも稼いでいます」
正確な送球も源田の長所である。どんな体勢からでも受け手の捕りやすいボールを投げられる秘訣は何か。
「おそらく、グラブに入るとすぐに、ボールを右手で鷲掴みしている。そして、投げるまでの間に素早く握り替える。最初から人差し指と中指で握ると、安定しないから悪送球に繋がりやすくなる。めちゃくちゃ肩が強いタイプではないけど、効率的に動いているので、一塁に間に合う」
今宮健太の本音評
パ・リーグ遊撃手部門のゴールデン・グラブ賞は2018年から6年連続で西武の源田が受賞。それ以前は5年連続でソフトバンクの今宮健太だった。
「車に例えると、源田はベンツです。確実なプレーを続けられる。今宮はフェラーリです。身体能力が高く、特に肩が強いから、想像できないスーパープレーを見せる。ただ、故障が多く、1シーズンの中で守備の質にバラつきが出ます」
明豊高校で投手も兼任した今宮は2009年、夏の甲子園で最速154キロをマーク。ソフトバンクにドラフト1位で入団すると、3年目に遊撃のレギュラーを奪った。4年目の13年8月17日の日本ハム対ソフトバンク(帯広)では、陽岱鋼のセンター前に抜けそうな当たりに追い付き、難なく一塁に送球。派手には見えないプレーに今宮の身体能力の高さが詰まっていた。解説席に座っていた水上は驚愕した。
「普通のショートなら、捕った後に一回転して投げるような打球でした。反動をつけないと、速いボールにならないからです。でも、今宮はスライディング気味にボールを捕った後、左足で踏ん張ったまま起き上がって、アウトにした。肩が強いから回転する必要がない。今まで私の見た中で1、2を争う凄いプレーでした」
工藤公康の相談「今宮は肩だけで…」
長所は、短所の裏返しでもある。身体能力を武器にした守備は体を蝕む原因にもなり、2016年オフには右ヒジの関節内遊離体の摘出手術を受けた。その2年前、ソフトバンクの三軍統括コーチ兼ファーム内野守備チーフコーチに就任した水上は二軍監督を経て、18年に一軍内野守備走塁コーチに転身。その直後、工藤公康監督は相談を持ち掛けてきた。