酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「パリ五輪、野球を除外したIOC役員に怒りを」“83歳で現役スポーツ実況”島村俊治アナが語る五輪野球「アトランタは松中信彦の満塁弾で…」
posted2024/08/07 11:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS
元NHKアナウンサーの島村俊治(としはる)氏を、覚えておられる野球ファンは多いのではないか。
甲高くよく通る声、分かりやすく明朗なアナウンス。そしてどんなすごい試合でも、自分から興奮して盛り上がるのではなく、淡々と実況する。そのほうが、かえって現場の臨場感が伝わり、感動が高まるのだということをよく知っていた名アナウンサーだった。
パリ五輪の野球なし…悔しがっているのは吉田さんでは
島村氏は東京都出身。早稲田大学高等学院高校から早稲田大学第一政経学部を経て、1964年、東京オリンピックが行われた年にNHKに入局。音楽への造詣が深かったことから音楽ディレクターを希望していたが、配属されたのはアナウンス部。最初の配属先の鳥取支局で高校野球の実況中継をして感動し、スポーツアナウンサーになると心に決めた。以後、高校野球、プロ野球からMLBまで、島村氏は多くの試合の実況中継を担当した。
また夏冬合わせて8回のオリンピックで実況を担当。様々な競技の名場面をスポーツファンに届けてきた。
島村氏は83歳になる今も、JSPORTSで週に1回程度、MLB中継を担当している。
7月28日に行われた「野球文化學會」総会で、島村氏は野球にまつわる興味深いエピソードを披露したが、オリンピックの野球競技に関する話を紹介しよう。
「今回のパリオリンピックでは、野球競技が外されました。私はIOCの役員に怒りを覚えます。フランスのパリでやる五輪で、なぜ野球をやめてしまったのか?
かつて、元阪神監督の吉田義男さんがフランス野球の指導のためにずっとパリに行っていたのですね。ですからフランスには、野球に目を開いていた時期があったのです。
今回のパリ五輪で、野球競技がないことを一番悔しがっていたのは、吉田義男さんではないでしょうか。パリの後のロサンゼルスでは復活するとのことですが、1つの競技が出たり入ったりしてもらっては、困ると思います。IOCもしっかり考えてほしい」
“初の金メダル”ロサンゼルス五輪での記憶
元阪神監督の吉田義男が野球フランス代表の監督を務めていたのは、1990年から95年のことだ。