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「絶対に恨んだりしない」涙する娘が父と交わした“誓約書”…ゴルフ笹生優花の原点「この書面にサインしたら、練習時間は親子じゃないよ」
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byGetty Images/Shigeki Yamamoto
posted2024/08/08 17:02
パリ五輪初日は5オーバーと出遅れ、巻き返しに期待がかかる笹生優花(23歳)。二人三脚でサポートしてきた父・正和さん
こんなエピソードもある。笹生が13歳のとき、「USガールズジュニア」本戦で同組の16歳の選手に飛距離で置いていかれて勝てず、一人で泣いていたことがあったという。
「家に帰ってきたら機嫌が悪いかった。夜中まで部屋の電気がついているから覗くと、泣いているんです。元気ないじゃん、と声をかけると、負けて悔しいから『もっと飛ばせるようになりたい』って言うんです。でも俺は娘に嫌われるの嫌だから、そんなのは教えたくないって言いました。練習がきつくなると辛いし、そうすると親を恨むようになるでしょ。敵になるのは嫌だと言ったんです。でも『恨んだりしない。だから(やることをリスト化した)プロミスノートを書いてほしい』と言うんです」
父は迷った。娘と誓約書を交わすようなものだ。それでも、いつもと違う真剣なまなざしに迷いはなくなった。そして娘の目を見てこう伝えた。
「リクエスト通りに飛ばせるように練習はするけれど厳しくなるよ。泣きながらやらなきゃいけないかもしれない。でも、この書面にサインしたら次の日から、ご飯を作ったりするときは親子だけれど、練習している時間は親子じゃない。これを区別できるならやってもいい」
父と娘の悲壮な覚悟が伝わってくる話でもあるが、この時から“世界一”になるためにはどうすればいいのかが、2人には少しずつ見えていたのかもしれない。
(第3回に続く)