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「最高の形でした」“あのオフサイド弾”だけでなく…なぜJリーグで不振だったFW細谷真大がパリ五輪で輝けたか「ただ、もっと大事なところで」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byMutsu Kawamori
posted2024/08/11 11:02
スペイン戦では“幻のゴール”に泣いた細谷真大だったが、FWとしてのポテンシャルの高さをパリ五輪で見せた
「ボールが来た瞬間、相手ディフェンスが来たことはわかってました。前を向いたら自分の良さが出ると思ったので、どんどん仕掛けていった」
気持ち良いほどぐいぐいと仕掛け、ペナルティエリア右から余裕を持ってクロスを入れると、中央に走り込んだ三戸舜介にはわずかに届かず、左から上がってきた佐藤恵允のシュートは相手GKに止められた。だが自陣から猛然とダッシュしてきた山本がこのこぼれ球を押し込んだ。劇的なゴールもさることながら、細谷のフィジカルの強さが際立ったゴールシーンだった。
それでも本人はいたって冷静だった。
「いいクロスが上がったので、決まって良かったかなと思います」
五輪初ゴール、控えめな喜びだった“意外な理由”
待望の初得点が決まったのはグループステージ第3戦イスラエル戦だった。79分から途中出場し、アディショナルタイム8分と表示されたあとの91分にゴールが生まれた。
自陣でパスを受けた藤田が出しどころを探りながら前方に運び、右サイドの佐藤を選択。ペナルティエリア右から佐藤がグラウンダーでややマイナスのクロスを入れる。するとゴール前でフリーになっていた細谷が右足で捉え、ゴール右隅に突き刺した。実はベンチに座っている間にイスラエルのクロス対応が甘いことを見抜いていた細谷。裏に抜け出そうとする藤尾翔太の動きにつられた最終ラインを尻目に、中央で待ち構えてフリーになっていた。
「3試合目にして1点取れたので、やっぱり嬉しかった」
待望のゴールだったとするわりにはピッチでの喜びは静かで控えめだった。これに関しては「蒸し暑かったので疲れていた」と意外な理由を明かしている。
大岩監督が口にした「細谷に対する思い」
このチームのフォワード登録は細谷に加えて藤尾、佐藤、平河悠、斉藤光毅の5人だった。今回の五輪では登録された22人から毎試合ベンチに入る18人を選ぶルールだった。これは通常のFIFA主催大会に比べ5人少ない。そのため、複数ポジションをこなすことができる選手が多く選ばれたし、例えば荒木遼太郎のように「練習でもやったことがない」ポジション(イスラエル戦でボランチ)でプレーした選手もいた。
荒木は「総力戦なので」と気にすることはないと説明した。そんな、ユーティリティ性が高い優先度で求められる五輪代表にあって、ストライカーはある種つぶしの利かない役割であり、だからこそ結果を求められる。
イスラエル戦のゴールを受けて、大岩剛監督が細谷についてこう説明している。