苦しい状況の中、石田コーチを始めとするスタッフのサポートもさることながら、リザーブとして同行する木原美悠の存在に救われた。

「ユニフォームを取りに行って急いで戻ってきてくれたり、今日（8月3日）は木原選手の誕生日なんですけど、『誕生日プレゼントでひなちゃんの銅メダルが見たい』と元気づけてくれたり。練習のなかでも励ましてくれて、関西弁のノリで『これできるんちゃうん？いいやん！』みたいな感じで褒め称えてくれたりもしたんです。こうやって銅メダルを獲得できて、木原選手に見せられることが本当に嬉しいです」

　そう話をするうちに自然と涙がこぼれた。木原の姿が東京五輪の早田と重なった。

　大会前、早田は「たとえ、試合中に滑って怪我をしたとしても、メダルを獲れなかったとしても、受け入れる覚悟はできている」と言い切った。

「どんな結果であっても、おばあちゃんになったとき、『パリ五輪、最高に楽しかったよ』って言える、そんな大会にしたい」と。

「この3年間で何か悪かったから神様に悪さされたのかな。でも、乗り越えられない試練じゃない。みんなが支えてくれたのでどんな結果でもやり切って、銅メダルをと思って戦いました。この状態で銅メダルを獲れたのは、金メダルより価値があると思っています」

石田コーチとハートポーズ　©︎Getty Images

　思わぬアクシデントに見舞われながらも、それを乗り越えられたのは、やはり彼女の人間力にほかならないと感じた。

「パリで卓球そのものを楽しみたい。後悔のないように、力を尽くしたい」

　8月5日からはいよいよ団体戦で金メダルへ挑む。

「自分はどうなってもいい。とにかくメダルを獲得するために、みんなで一致団結して挑みます」