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田中希実を破って全国制覇→陸上界からドロップアウト…それでも“元・天才少女”高橋ひな(26歳)が現役復帰を決めたワケ「最大限の努力はしたと…」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by(L)AFLO、(R)Satoshi Wada
posted2024/08/06 11:03
26歳での現役復帰を決めた高橋ひな。いまだ800mの中学記録を持つ「元・天才少女」は現在、ピラティスのインストラクターを務める
種目は違うものの、新谷は約5年間のブランクを経て復帰すると、一気に第一線まで状態を戻した。そして、10000mでは日本記録を樹立し東京五輪にも出場した。マラソンでの活躍は周知のとおりだろう。
「たぶん誰にも真似できない形ではあると思うんですけど、自分も新谷さんぐらい、いや、それ以上やらないと戻らないと思っています。新谷さんは私よりもブランクが長かったですが、私の3年は他の人の10年と同じぐらい、のんびりしていましたから」
近くで見てきた新谷の取り組みを参考にして、高橋も返り咲くつもりだ。
原点回帰とでも言うべきか、トラックでは800mを主戦場にしようと決めている。
「陸上競技をする上でも、見る上でも、一番好きな種目。前職のTWOLAPSで中距離に特化した大会に携わり、大人になってからそう思うようになりました。
私は別にギャンブラーではないんですけど(笑)、短くもなく、長くもないトラック2周での駆け引きが、見ていてワクワクするんです。自分が走っていた時も、そういう駆け引きの中で『自分が試合を動かしている』っていう感覚が面白かった。復帰してから800mをやりたいなって思っているのは、そういう理由からです」
高橋がもつ女子800mの中学記録はいまだに破られていない。
中距離新時代に「ちょい遅れぐらいで」
だが今、日本の女子中距離が一気に動き出そうとしている。7月には、16歳の久保凛(東大阪大敬愛高2年)が、日本女子で初めて2分の壁を突破し、1分59秒93の日本新記録を打ち立てた。10歳年下の久保の快挙に、高橋が衝撃を受けないわけがなかった。
「男子の100mも1人が10秒を切ったら、ぽぽぽぽんと、9秒台を出す選手が続きました。最近だと女子100mハードルで12秒台を出す選手が増えています。女子中距離も、たぶん、これからどんどん加速していくんだろうなと思います。自分の体の状態はまだまだですが、ちょい遅れぐらいで、その加速に乗っていきたい」
そう決意を口にする。