「祐希をキャプテンにすればよかったって今は思います。いや、今はじゃないですね。たぶん、その時も祐希がキャプテンのほうがいいと思っていたんです。だって、いくらチームを離れていたからとはいえ、石川祐希という人間性、実力、技術、いつだってキャプテンの器で、“キャプテンシー”というスキルがある。

　そのまま祐希がキャプテンとしてやればよかったんだろうけれど、その時の僕は最後まで祐希に負担をかけたくなかったし、もしそこで（石川が）ケガしたらどうしようとも思った。高校から大学までずっと祐希が引っ張ってくれたから、最後の最後ぐらい、解放されてのびのびやってほしい、と思っていたんです」

　しかし、結果は「吉」ではなく「凶」と出る。

©︎Itaru Chiba/AFLO

筑波大に逆転負け、忘れられない石川の背中

　後に石川も「負けるならここだと思っていた」という準決勝の相手、筑波大には星城高の同期でセッターの中根聡太がいた。武智や石川と同じかそれ以上に、勝負に対する執念を体現する選手だということは嫌と言うほどわかっていた。

　悪い予感は当たる。2セットを先取した中大が第3セットでも先行するが、スパイクミスやブロックを機に、試合の流れは筑波大へ。2セットを取り返されると、最終セットも筑波の勢いを止めきれず、12対15。逆転負けを喫した。

　涙する選手もいる中、武智はただ茫然とするしかなかった。その肩を叩き、石川が先に会場を出た。その後ろ姿が今も忘れられないと振り返る武智の目線が少し、下を向く。

「祐希がいても負けるんだ、って。僕、祐希と一緒にやってきて負けたことなかったですから。俺がキャプテンをやると決めたのに、祐希を勝たせて終わることもできなかったのに、祐希はそういうの全部出さず、僕らのことも責めない。やっぱり祐希がキャプテンであるべきだった。今は余計にそう思います」

　後に石川からも当時の心境を聞いた。負けた悔しさよりも、自分はキャプテンじゃなかったからと周りのせいにしようとしている自分が嫌だった。そう明かすと共に、「だから自分を信じ、貫く時には貫かなければダメ」と自らに課してきた。日本代表でも主将という立場を背負うことが自分にとってはプラスになる、と邁進してきた。大学時代の苦い経験が、まさに今へとつながっている。

中央大時代のオフショット。左から武智洸史、石川祐希、大竹壱青（本人提供）

　当時の石川の心情を間接的に武智にも伝えると、何度も頷きながら言った。

「やっぱりすごいですよ、石川祐希。負けも悔しさも反省も糧にして、常に進化し続けているわけじゃないですか。僕にとっては憧れの存在です」

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