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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「キャプテンは石川祐希ですけど、大ボスは関田誠大」「2人の言い合いは日常だった」盟友・今村貴彦だからわかる、天才セッターが最後に託す場所
posted2024/08/02 11:56
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Takahiko Imamura
嘘だろ、俺かよ。
点取り屋のオポジット。本来なら「持って来い!」と声を張り上げてトスを呼ぶのが自分の役割とわかっていながら、今村貴彦は内心ビビりまくっていた。
振り返った場面は、今村が中央大学4年だった2015年の春季リーグ。対戦相手・筑波大のサーブを受けた後輩、石川祐希のレシーブが少々乱れ、コートの横に飛んでいった。そのボールをつなげたのは、今村と同学年のセッターで当時の主将・関田誠大だ。
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関田は素早くボールの下に走り込む。後ろ向きでトスをするのを見れば、普通ならば最も近い位置にいる石川へトスを上げると考えるのがセオリー。石川も攻撃準備に入っていた。しかし、警戒した筑波大のブロックは石川に2枚ついた。
普通じゃつまらないでしょ、とばかりに関田がセレクトしたのは、石川とは逆サイドの今村。コートの横幅いっぱいに絶妙な高さと質のバックトスが、バックライトにいた今村のもとへ上がってきた。
当然、誰も予想していない。ノーマークでボールを叩きつける瞬間、何より緊張したと振り返る。
「誰もが石川だと思っていたし、正直僕もそう思っていたのに、自分のところに来た。これは絶対にミスできないと思いますよね。バチーンと叩いて、決まった瞬間“ありがとう!”と関田にハイタッチをしに行ったら、決まると思っていなかったみたいでめちゃくちゃ喜んでいました」
「キャプテンは石川ですけど、大ボスは関田」
あれから9年。味方をも驚かせた同期は日本代表の揺らがぬ司令塔として、入学当初から「放つオーラが違った」という後輩は日本代表のエースで主将として、パリ五輪を戦う。
同世代の選手の多くが今の日本代表の一員になりたかったと悔しさを抱いているが、2人をよく知る今村は、日本代表を応援する楽しさも存分に味わっている。
「キャプテンは石川ですけど、大ボスは関田(笑)。みんな、絶対にボスをキレさせるなよって思いながら見ています」
中大では今村が2学年上。「ヒョロヒョロしていたけど、バレーボールになるとすごかった」と驚かされた石川とのエピソードを語る前に、同期の関田との出会いを振り返る。