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「キツかったですね。小川派、山本派とか」それでもリベロ山本智大が盟友・小川智大の想いを背負うと決めた理由「一番最初にメダルを渡したい」 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byXinhua/AFLO

posted2024/08/02 11:38

「キツかったですね。小川派、山本派とか」それでもリベロ山本智大が盟友・小川智大の想いを背負うと決めた理由「一番最初にメダルを渡したい」<Number Web> photograph by Xinhua/AFLO

パリ五輪のコートでも存在感を発揮している山本智大(29歳)。チームを救うスーパーレシーブを期待したい

 予選ラウンドの全試合を終えた6月23日の夜、全員が揃ったミーティングで、ブラン監督はパリ五輪の内定選手を発表した。ポジションごとに選ばれた選手の名前が呼ばれていく。

「リベロ、ヤマモト」

 安堵と同時に複雑な想いが押し寄せた。

「いろんな感情がこみ上げてきました。めちゃくちゃ嬉しいし、喜びたい。でも、うしろでは小川選手が号泣していたんで……。そういう想いをちゃんと汲み取って。『彼の分も』という気持ちは非常に強くなりました」

 発表のあと、山本はブラン監督に呼び止められ、言われた。

「お前が一番キツかったのは俺はわかってる。リベロ2人には相当なプレッシャーがあったし、いいプレーができない状況に陥っているのもわかっていた。でも伸び伸びプレーすることが一番大事だから」

 山本は、「そう言われてちょっとホッとしました。でも『プレッシャーかけてきたのそっちじゃん!』って言いたかったですけどね」と苦笑した。

 ブラン監督は翌日の会見で選考理由をこう明かした。

「山本はフローターサーブに対するサーブレシーブや、戦術の中での動きを改善する必要があり、小川はディグの技術を向上させることが課題でしたが、2人ともその点で大きく上達した。2人とも、強いリーダーシップでチームを勝利に導けると示してくれましたし、毎日の練習でも素晴らしい雰囲気を作り出す性格を持っている。

 ただ、私は決断しなければいけない。世界各国が強いサーブ、スパイクを打ってくるのに対し、最終的に山本を選びました。彼はオリンピックで活躍してくれると信じています」

「メダルを獲って一番最初に渡したい」

 メンバー発表の夜は、山本は小川に声をかけられなかったが、翌日朝の散歩の時には、いつも通りに見えた。自分に気を遣ってそうしてくれているのだとわかっていた。

「彼とは本当にチームで一番の大の仲良しで、ポジションも一緒で、バレーの話も非常に合います。バレーIQというか、考えていることのレベルがすごく高いので、話していて面白い。彼も世界トップの選手で、2020年から今まで一緒に2人で世界と戦ってきて、試合でも練習でも刺激を受ける部分がたくさんあった。彼だからこそ、ここまで高め合ってこられた。

 ミーティングの時の彼の涙を見たら、『絶対頑張ろう』と思いましたし、本当にメダルを獲って、彼に一番最初に渡したい。その想いは強いです。彼が本当に悔しいのはわかっていますし、彼が出たかっただろうオリンピックで、僕はプレーすることができるので、その感謝の気持ちと、恩返しの気持ちを持って、結果で返せるように頑張りたい。もう、やるしかないなって感じです」

【次ページ】 パリで取り戻した“笑顔”

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