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「キツかったですね。小川派、山本派とか」それでもリベロ山本智大が盟友・小川智大の想いを背負うと決めた理由「一番最初にメダルを渡したい」 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byXinhua/AFLO

posted2024/08/02 11:38

「キツかったですね。小川派、山本派とか」それでもリベロ山本智大が盟友・小川智大の想いを背負うと決めた理由「一番最初にメダルを渡したい」<Number Web> photograph by Xinhua/AFLO

パリ五輪のコートでも存在感を発揮している山本智大(29歳)。チームを救うスーパーレシーブを期待したい

 プレッシャーで体が思うように動かない。そんなことは初めてだった。

 それが顕著だったのが予選ラウンド第2週、福岡大会2戦目のドイツ戦だ。選手間を狙ってくるサーブにエースを奪われたり、自信を持っているディグでもミスが出た。

「あの時は、僕じゃないような動きをしていました。かなりプレッシャーを感じていた。今までは(交互に起用されるとしても)僕が第1戦に出ていたんです。でも福岡大会では、第1戦のイラン戦に小川選手が出て、めちゃくちゃいいプレーをした。それでなおさらプレッシャーがかかって……。

 ドイツも強かったし、合流したばかりの選手との連携も噛み合わず、負の連鎖が続いた。あの試合は本当にしんどかったです」

眠れない夜、SNSに批判…体重4kg減

 試合中、「俺ならできる」と唱えて自分を支え、なんとか試合はフルセットで勝利した。

 石川祐希(ペルージャ)や高橋藍(サントリーサンバーズ大阪)との連携を念入りに確認して臨んだ福岡大会第4戦のスロベニア戦ではしっかりとプレーを立て直したが、選手選考の場はまだ1週残っていた。ギリギリの精神状態で戦っている選手にとって、1カ月以上かけて行われる12試合の予選ラウンドはあまりに長い。

 山本は眠れない夜が続いた。夜中に目が覚めると、どうしても選考のことを考えてしまい、眠れないまま朝を迎える。食欲も落ち、大会中に体重は約4kg減った。

 メンバー選考のプレッシャーだけでなく、SNSでの批判も精神的にこたえたと振り返る。

「キツかったですね。アンチの人にいろいろ書かれたり……。思い出したくないんですけど、小川派、山本派とか、そういうのもいっぱいあって。見たくなくても回ってくる。コートに入ったらそんなの関係なくやらなければいけないんですけど、そういうものを無視してやるというのは非常に難しくて、本当にしんどかったです」

【次ページ】 メンバー選出に複雑な想い「小川が号泣していた」

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