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金メダル前日、橋本大輝(22歳)はミーティングで涙を浮かべた「萱和磨でも谷川航でもなく…」体操エースを奮い立たせた“2人の初出場選手”
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2024/07/30 18:00
団体金メダルが確定し、感極まった橋本大輝(22歳)
橋本の思い「ちょっと話が長くなるんですけど…」
そして、鉄棒の演技前に背中を叩かれた後は、「演技前から若干目が潤んでいた」と言い、着地を決めた瞬間は感情が一気にこみ上げた。
その時の感情について橋本は「ちょっと話が長くなるんですけど」と言ってから、このように説明した。
「4月に順風満帆かなと思えば5月に(右手中指の)ケガをして、そこからの代表合宿では多少自信を失いかけて、金メダルをどうやって取るのかも考えられないままだった。でも、練習場のドアを開ければみんなが“オリンピックで金メダルを取りたい”という練習をしていた。その姿を見て僕は“このチームのために戦いたい”という思いを持った」
フランス入りしてからも左肩を痛めるなど、コンディションは決して良くなかった。けれども、毎日見る仲間の顔が橋本に活力を与えていた。
「みんなのおかげで“橋本大輝”がもう一度復帰できた。きょうはみんなに“ありがとう”と言えたことが本当に幸せだった。団体の金メダルはマジでうれしい。横を見ればみんなが笑っていて、みんなが死ぬほどハグして、さっきハグしたのにもう一度ハグしたくなったり、握手したくなったり……。団結したものをさらに深めてくれるものだったし、さらにみんなを上に行かせてくれる金メダルなのかなと思えた」
欲しかったものを手にし、柔和な笑みを浮かべていた。仲間を引っ張り続けてきたエースは、仲間に支えられて手にした金メダルを、大事そうに何度も見つめていた。