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自身の名がつく6つの技を持つ男。
白井健三が目指す“感動する体操”。

posted2020/04/25 11:30

 
自身の名がつく6つの技を持つ男。白井健三が目指す“感動する体操”。<Number Web> photograph by KYODO

昨年12月の豊田国際競技会のゆか演技で「シライ3」「シライ/ニュエン」の大技を決め、ガッツポーズ。同大会トップの谷川翔とわずか0.1点差の14.500点の好演を見せた。

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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KYODO

 ナンバーワン、オンリーワン、スペシャルワン。体操男子の白井健三(日体大大学院)は、すべてを満たしてきた稀なアスリートだ。

 高2だった2013年世界選手権でシニアの日本代表デビューを飾り、種目別ゆかでぶっちぎりの金メダルを獲得すると、'15年、'17年の世界選手権でもゆかで頂点に立った。

 '15年世界選手権と'16年リオデジャネイロ五輪の団体総合では、内村航平キャプテンらとともに日本に金メダルをもたらした。

 次は東京五輪での種目別ゆか金メダルと団体連覇。自他ともに期待を膨らませる中、'17年世界選手権では、予選で足を負傷して途中棄権した内村からバトンを渡されるように個人総合で表彰台に上がり、銅メダルを手にした。

 得意種目で勝負する「スペシャリスト」から、6種目総合で競う「オールラウンダー」への華麗なる転身。世界中の選手や関係者が驚きの目で白井を見つめた。

2018年の世界選手権で状況が暗転した。

 凄さは成績だけにとどまらない。'13年から'17年にかけてほぼ毎年のように新技を発表し続けたことも驚異的だった。その数、実に6つ。世界で誰もやったことのない技を編み出して国際大会で成功させるという高いハードルを、6度も超えてきたのだ。

 それでいてリオ五輪以降は、6種の異なる能力を問われるオールラウンダーへの道にも挑んだ。二律背反をものともしないチャレンジャー精神こそ、「白井健三」の神髄だった。

 白井の前には上昇階段しかないようだ。そんなふうにさえ感じられた状況が暗転したのは、'18年秋の世界選手権だった。

 白井は弾性の弱い中国製器具に苦しんだうえに(この器具は、後に各国の選手から苦情が出たために東京五輪での採用が見送られた)、採点でも空中姿勢や着地により厳しい目を向けられるようになった。

【次ページ】 30人中最下位という信じがたい順位を記録。

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