バレーボールPRESSBACK NUMBER
「マサヒロ来ないね…」男子バレー“絶体絶命の夜”に一体何が? 黒星スタートの今こそ生かされる経験「あの負けが僕らをひとつにした」4人の証言
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byGetty Images、Naoya Sanuki/JMPA、Kaoru Watanabe/JMPA
posted2024/07/30 11:02
(左から)高橋健太郎、関田誠大、山内晶大、石川祐希
ホテルに戻ると関田は部屋にこもり、食事会場に現れなかった。
だが周りは関田を一人にしなかった。
どうしたらいいだろうと、悶々と考えながら部屋に戻った高橋健太郎は、テレビをつけた瞬間、目を見開いた。昨年3月にがんのためこの世を去った東京五輪代表セッター藤井直伸さんの特集が放送されていたのだ。慌てて関田に電話した。
「おい!テレビ観ろ!テレビ観ろ!」
その特集を観終わったあと、高橋は「コンビニでも行くか!」と関田を誘った。
並んで外を歩きながら、懸命に関田に話しかけた。
「セキさん、さっきの観て、どう思った?」
「さあ……すごいね……」
「こんなタイミングで、すごいよね。やっぱ見てるよ、あの人は。藤井さんは見てるよ!」
その後は一緒に関田の部屋に行き、高橋は話し続けた。
「ポジティブなことしか言ってなかったですね。とにかく『過ぎ去るから、今日は!』ってこと。今日は人生で一番最悪な日だと思っても、半年後にはもう『ああ、そういうこともあったな』って結局塗り替えられていく。僕は結構そういう経験が多いので、『俺も、過ぎ去ってしまえばこうだったよ』と体験談を話しました。自分のせいだと思ってるかもしれないけど、全然そんなことないし、そういう悩みというのは、大きなことだと思っていても、俯瞰して見たらちっぽけに見えたりするよって。
自分のやりたいことをやれているこの職業の中で、悩みやストレスを抱えられるって幸せだと思う。将来セカンドキャリアに進んだ時には、どうやっても自分の力では太刀打ちできない悔しい出来事に出くわす時は来ると思う。でも俺たちは今こうやって、自分の体を使って表現できる。『わーもうダメだ』と思っても、次の日に体育館に行って、自分を変えられるチャンスがいくらでもある。そんな話をずっとしていました。僕しゃべり出すと長いんで(笑)」
「どうしたらいい?」山内を呼び止めた石川
そこに山内も途中で合流していた。
山内は食事会場から部屋に戻る際、石川に呼び止められた。
「ね、ヤバくない?」
石川は切迫した表情で続けた。
「どうしたらいいと思う? 俺、関田さんに話しかけていいかわかんないんだよね。どう接していいかわかんない。でも一人にしておくのはヤバイよね?」
「うん、一人にしとくのはよくないと思う」と山内もうなずいた。
「アプローチしてもらっていい?」という石川の頼みを、山内は引き受けた。
「実際僕も『関田がいなかったらキツイっしょ』と思っていたので。ちょっとでもはけ口になればと思って」
高橋とともに関田の部屋で語り合った。