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「私もこれ、できるじゃん」で金メダル!?…女子スケボー・吉沢恋(14歳)と赤間凛音(15歳)“本当の関係” 2人に見た「東京五輪のデジャヴ」とは?
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/07/29 17:00
スケボー女子ストリートで金銀メダルを獲得した吉沢恋(左)と赤間凛音。同じ2009年生まれだが、そのキャリアには意外な差が
それは「ビッグスピン・フロントサイドボードスライド」。これだけ聞いても理解できる人はほんのわずかだと思うが、東京五輪で西矢椛の金メダル獲得を決定的にしたトリックといえば、ことの重大さがわかるだろうか。
このトリックは東京五輪以前から西矢の得意技として知られてはいたのだが、当時はSNSをやっていなかった吉沢はそのことを知らなかっただけでなく、自分のスキルがガールズでどのレベルにあるのかも把握できていなかった。
顔を合わせるのは地元相模原市にある小山公園スケートパークの先輩達。
そこには2大会連続五輪出場を果たし、世界選手権も制した白井空良や、ガールズシーンのトップをひた走ってきた藤澤虹々可など錚々たるメンツが揃う。そんな環境下にいれば上達するのは必然だった。
「私もこれ、できるじゃん」でメダルを狙いに!?
3年前の西矢を見て憧れを抱くのではなく、「あ、私もこれ、できるじゃん」とスイッチが入って本気でメダルを狙いに行くことを決意したというのだから恐れ入る。
筆者もその年の年末に開催された全日本選手権にて、同じトリックを成功させた吉沢らを見て新たな時代に突入したことを実感させられたことははっきりと覚えている。
だがそれ以上に彼女が凄かったのは、西矢が東京五輪で成功させることができなかったトリックも成功させていることだ。
それは「ビッグスピンキックフリップ・フロントサイドボードスライド」と呼ばれるもので、96.49ptと今大会最高得点を叩き出している。
西矢が過去に成功させたことのある最高難度のトリックを、今度は吉沢は成功率と完成度を高めて披露し、金メダルの歴史を引き継いだのだ。
3年前は西矢椛が西村碧莉という偉大な先輩の背中を追いかけて金メダルを獲得した。今度は吉沢恋が、西矢椛や赤間凛音ら偉大な先輩達の背中を追いかけて金メダルを獲得。
「スケートボーダーのお互いを讃えあう文化は、国境だけでなく世代も超える」
新たに作られた歴史を見てそんなことを強く感じた。