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橋本大輝は記者の質問に「ちょっと難しいですね…」体操エースまさかの不調、着地ミス…現場で何が起きていた? 「正常な判断もできなかった」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/28 17:41
7月27日の予選にて納得のいく演技ができず悔しがる橋本大輝
チームメイトたちが明かした「別に何も心配してない」
ただ、珍しく弱気を見せる橋本だが、チームの仲間はエースの底力を信じている。
キャプテンの萱和磨はこう語る。
「別に何も心配してない。どうせ大丈夫でしょうというところはあるし、ポディウムトレーニング、予選、(決勝)と上がっていけばいいと思う。日の丸を何度も背負っているからこそできることがあるし、日の丸の意味ももちろんわかっている。僕がキャプテンだからと言って、心配する必要はない」
萱、橋本とともに東京五輪団体銀メダルの悔しさを知る谷川航もこのように言う。
「(予選の演技では)きつそうな感じのところはあったんですけど、一回いい演技がバチンと出れば大丈夫だと思う。大輝は、きょうは6種目やったけど団体決勝はやる種目数が4つとか5つに減ると思うので、そこに集中できる。一回いい演技を出せればそこから乗ってくると思うので、期待しています」
団体決勝に向けては橋本自身、まだ悔しさを引きずっている様子でありながらも、「あんなに疲れてる中でも、6種目やり切れたっていうのは良かったのかなと思う」とポジティブな言葉も出た。
種目別決勝に進むことのできなかった鉄棒に関しても、F難度のリューキンを組み込むマックスの演技構成の“試運転”をできたことは団体決勝に向けて大きな意味がある。
団体決勝での“切り札”がある
決勝は予選2位の日本と1位の中国がゆかから始まる同じローテーションで演技をする。鉄棒は最終種目。橋本は「リューキン(の出来映え)は良かったので、団体決勝でも多分、最後の武器になると思う。今日それを出せたのは良かった」と言う。
高得点が必要とみればリューキンを入れることが可能。安全策を採るなら抜くのも良しということで、切り札的な技として使えるというわけだ。
東京五輪では男子個人総合と鉄棒の金メダルを獲得した橋本だが団体では銀メダルに甘んじている。パリ五輪での最大の目標はみんなで笑顔になることのできる「団体金メダル」だ。
「予選ではみんなが頑張って声を出していて、(ミスをして)申し訳ないと思っていた。団体決勝でいい演技を出して金メダルを取ることが僕の一番の理想。それがみんなへの恩返しになる。そこの気持ちだけは忘れずに団体決勝に臨みたい」
エースは気持ちを奮い立たせた。