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橋本大輝は記者の質問に「ちょっと難しいですね…」体操エースまさかの不調、着地ミス…現場で何が起きていた? 「正常な判断もできなかった」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/28 17:41
7月27日の予選にて納得のいく演技ができず悔しがる橋本大輝
冒頭に組み込んだひねり技の「アドラーハーフ」で橋本にしては珍しく体の軸がブレた。ただ、そこから続いて行く高難度の離れ技はすべて成功した。F難度のリューキンを筆頭に、G難度のカッシーナ、E難度のコールマン、D難度の伸身トカチェフ、C難度の開脚トカチェフを完遂。
しかし、最後の最後に落とし穴が待っていた。後方伸身2回宙返り2回ひねり降りの着地の際に大きく前へ弾んでしまい、両手をマットにつく大過失。Dスコア6.6は世界最高レベルの難度だったが着地の減点が大きく、得点は普段の橋本と比較すると1点以上低い13.733。8人が進出する種目別決勝への道が閉ざされ、この時点で鉄棒の金メダルの可能性がついえた。
橋本によれば、6種目を行なう中で終盤に疲労が出てくることはあらかじめ予想していたが、3種目目の鉄棒を終えた時点で疲れを感じるとまでは想定していなかったという。
「試合を久々にしたので、早めに腕が両方ともきついなと思った。(指をケガした)右手だけじゃなくて、両方きつかった。6種目回っていく中で、どんどん体が重くなっていった。最後までやり切るのが、正直大変だった」
鉄棒の降り技では距離が出すぎてしまうことを察知し「こけると思った。あまり良い感覚ではなかった」とも言った。
記者の質問に「ちょっと難しいですね…」
試合中はしばしば体がきついというような表情を見せ、トレーナーに腕や肋骨あたりのケアを何度もやってもらっていた。そして、試合後の取材エリアでは気持ちの部分できつそうな様子を隠せなかった。
決勝に向かってどのように立て直していくか?
そう聞かれると、「どうしたら立て直せるかと言われたらちょっと難しい」と力なく言った。
「やれることをやるしかない。それだけだと思います。どうしたらスイッチを入れられるか、もう一度自分が立て直せるかと聞かれると、ちょっと難しいですね……」
これまでも数々の大舞台で失敗からすぐに立ち上がり、気持ちを切り替える姿を見せてきた橋本だが、「(鉄棒の後)とにかく最後までやらなきゃいけないなと思ってやっていたが、疲れていて正常な判断もできなかったし、気持ちも引きずってしまった。気持ちの面も調整面も反省すべきところだと思う」と言うしかなかった。