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日々是バスケBACK NUMBER
「2年前、ホテルをウロウロしてた少年が…」20歳ジェイコブス晶が“飛び級”パリ五輪をつかめた理由「八村選手や渡邊選手はずっとアイドル」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2024/07/27 11:07
FIBAに“五輪で注目の若手”にも選出されたジェイコブス晶(あきら、20歳)
去年夏、U19ワールドカップの大会が終わった後、ジェイコブスは短期間、FIBAワールドカップ直前の代表合宿に合流した。しかし、結局大会ロスターには残ることはできなかった。
漏れ聞こえてきた話によると、大会直前にビッグマンの渡邉飛勇が故障離脱したときにジェイコブスをロスターに入れる案も出たという。しかし大学側からチームに合流してほしいとのリクエストがあり、実力面でもまだパワーやディフェンスなど足りないところが多かったこともあって、このときは選考から外れた。
その直後に代表を外れた悔しさについて聞くと、ジェイコブスは言った。
「悔しい気持ちは、もちろんあります。カットされたのはもちろん悔しいけど、これからもチャンスは絶対出てくると思うし、ホーバスさん(代表ヘッドコーチのトム・ホーバス)からも、何をしてほしいかっていうことは全部聞いている。代表には毎回入りたいと思っているので、もっとできるというところを大学に行っても見せたいと思います」
その宣言通り、ハワイ大学での1シーズンの間にウェイトトレーニングに励み、自分の武器のシュートもさらに磨いてきた。
「ホーバスHCから求められるのはシュート」
今年2月、ハワイ大対カリフォルニア大フラトン校の試合を見に行ったときのこと。ジェイコブスは前半半ばで試合に出てくると、僅か3秒で最初の3ポイントを打ち、決めた。コーチから指示されたフォーメーションプレーだった。
ハワイ大のエラン・ギャノットヘッドコーチは、ジェイコブスのシュートについて、こんなことを言っていた。
「ふつうは試合に出てシュートを打つまでに、試合の流れに少し慣れる必要があるのですが、アキラはすぐに打つことができる数少ない1人です。それはすばらしい長所だと思います」
実は、これも練習して磨いてきた長所だった。アシスタントコーチから、練習のときもコートに入ったらすぐにシュートを打つように言われ、毎日練習に行くと何よりも先に3ポイントを打つという練習をしてきた。その努力があってこそ、1年生ながらに、自分がシュートを打つフォーメーションを指示してもらえるようになった。
「いつも練習してることだし、あいているなら打つ。毎回打つと決まるという自信はもっています」
代表でも、ホーバスHCから求められているのはシュート。ジェイコブスも合宿中から何度も、「自分の役割はシュートを決めること」と繰り返し言ってきた。
ほんの4年前までNCAAにも日本代表にも知られていなかった少年は、いつの間にか20歳の、日本代表のユニフォームが似合う青年になっていた。4年の間、いや、その前からずっと、たとえ誰も見ていなくても続けてきた努力の成果を、世界中の人が見ているオリンピックの舞台で披露するときがきた。
(前編から続く)