40歳で逝去した父への思い

　橋本大地には橋本大地のプロレスがあって、だから“破壊王”というフレーズにも変な抵抗がない。もう一つ、年齢という面でも父を意識するそうだ。

「ボロボロになってプロレスを続けるよりは、そうなる前に引退したいって気持ちはありますね。橋本真也には、強いままのイメージが今も残ってるじゃないですか。それは歳とってボロボロになった姿を見せてないから。体にガタはきてましたけどね。もっと続けてたら、試合のクオリティは誰が見ても下がってたはずで。

　そういう意味では、プロレスラーとして、あの時に死んだのも悪いことではなかったんじゃないかと。レスラーとしては、ですけど」

幼い大地と父・橋本真也　©本人提供

　大地も「まだできる」と言われるくらいで引退したほうがいいのではないかという“美学”がある。「まだやってんのか」とは言われたくないと。だが、その時を何歳で迎えるかは、今は分からない。一つの目安は「あと7、8年経ってどうなってるか」だ。現在32歳。父は40歳で亡くなっている。

「その時にどういう状態になってるかは予想できないけど、父より歳上になった自分っていうのは怖いですね。父が亡くなった年齢を自分が超えるというのはマジで怖い。何なんでしょうね、この感覚。その時はもうプロレスやめてるのかな、どうなんだろう」

　我々は40代の橋本真也を見ていない。大地にとってはお手本も反面教師もいないということになる。だから余計に、そのあり方が本人には怖く、我々には興味深い。40代の橋本大地は、きっと今以上に個性的で魅力的なプロレスラーになっているはずだ。今の彼を見れば、誰だってそう思う。

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