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「日本スタイルも出し切った」イヨ・スカイが“WWEでは使えない大技”を…林下詩美が女子プロレス新団体で叶えた夢「今日は紫雷イオが見れた」
posted2024/07/23 17:17
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
女子プロレスの新団体マリーゴールドが、旗揚げから54日という短期間でビッグマッチを開催した。後楽園ホールでの旗揚げ戦が5月20日、両国国技館大会が7月13日である。
マリーゴールドはロッシー小川氏が設立した団体。小川氏はスターダム創設者である。スターダムは上場企業ブシロード傘下となり、旗揚げ当時と比較にならないくらい大きくなった。エグゼクティブ・プロデューサーである小川氏の仕事は「マッチメイクだけ」だったという。
小川氏としては、巡業の日程を決めたり会場を選ぶところから、あらためて団体運営をしてみたかったのだ。新木場1stRINGは以前と比べ立見客が入れられないので動員に限界があるそうだ。ただ「(グッズ)売店はやりやすいんです」。キャパシティの面では都内の別会場のほうが使い勝手がいいのだが「そっちは売店の動線がよくないんですよね」という。
大資本の後ろ盾がないマリーゴールドは新しく、また小さな団体だと小川氏。だから運営は「まず身の丈に合った形」を大事にしている。小さな会場を確実に満員にして、そこで生まれる熱気が次のステップにつながるのだ。ガラガラの大会場に意味はない。
ではなぜ、旗揚げ54日で両国国技館に進出したのか。小川氏が「恥ずかしい結果(集客)にはならないだろう」と判断した背景には、2つのカードがあった。ジュリアvs.Sareeeと林下詩美vs.イヨ・スカイだ。
「会わせたい人がいる」「やめときましょう」
ジュリアvs.Sareeeは現代の日本女子プロレス界における最高の顔合わせの一つ。そして林下とイヨはカード発表前まで想像もできなかったドリームカードだ。
イヨは紫雷イオとしてスターダムでトップ選手となり、2018年6月にアメリカ・WWE入団を表明した。業界最大の団体でもシングル、タッグともにベルトを巻いた世界的ビッグネームだ。そんな選手が、小川氏との縁もあって異例中の異例と言える他団体参戦を果たす。
これは林下がいるからこそのカードでもあった。彼女は紫雷イオに憧れてスターダム入門を決めたのだ。しかしイオは林下がデビューする直前にWWEへ。憧れの人との対戦もタッグ結成も叶うことはなかった。
「イオさんは誰よりも強い存在感と輝きがある人でした。“いつか日本に帰ってきたら、その最初の試合で闘える選手になっていたい”と思ってやってきました」
一方、イオも林下の存在を意識していないわけではなかった。いや、あえて意識しないようにしていたと言ったほうが正しいだろうか。
「彼女が私に憧れてスターダムの門を叩いたというのは聞いていて。“イオさんに会わせたい人がいる”、“挨拶したいって言ってる練習生がいるんですよ”って。でも私は“やめときましょう”と言ったんです。選手になってから、リング上で赤コーナーと青コーナーに立って、そこで初めて目を合わせたかった。せっかく私に憧れたんなら、会うのはリング上で。あれから6年以上経って、その日がやってきた。私も嬉しかったです」