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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
40歳で逝去した橋本真也へ“長男の本音”「父が生きてたら…怒られてただろうな」 プロレスラー・橋本大地が“破壊王”を継承する日
posted2024/07/19 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
L)AFLO、R)Norihiro Hashimoto
2011年のプロレスラーデビューから13年が経ち、後輩も増えた橋本大地の魅力の一つは“めんどくささ”だ。
ストレートに熱さや気合いを出すのではなく、対戦相手や観客に“謎”を提示する。たとえば5月4日の大日本プロレス・横浜武道館大会でのストロングヘビー級タイトル挑戦に際しては、チャンピオン・青木優也からの対戦指名に条件をつけた。それは「前哨戦を行わない」というもの。
プロレス界ではタッグマッチなどで前哨戦を重ね、タイトル戦に向けての熱を高めていくというマッチメイクが一般的だ。大地はそれをよしとしなかった。
「いろんな人と話をしたんですけど“前哨戦はいらないんじゃないか”という人がけっこういて。前哨戦でタイトルを争う選手同士が当たると、そこで終わりというか。いい顔合わせを先に見せてしまうわけじゃないですか。前哨戦の結果や内容でタイトルマッチの予想もされたくないですし。まっさらな状態で見てほしくて。実際、前哨戦をやらなかったのは正解だったと思いますね。緊張感があったし、たぶん切符(の売上げ)も伸びたはず」
もちろん“謎”を提示することで、チャンピオンに“圧”をかけるという狙いもあった。
「試合が決まった時点から闘いは始まってますから。お客さんにも考えてほしかったんですよ。“前哨戦なしって、どういう狙いなんだ”って。やっぱり人と違うことがやりたいし言いたいですよね、ありきたりじゃなく。まっすぐなコメントもいいんでしょうけど、みんな僕にそれを求めてるのかなと。何か引っかかることを言うのが僕だと思う」
「父が生きてたら怒られてただろうなって」
父の死と同時にプロレスラーになることを決意し、父が作ったZERO-ONEでデビューした大地。現在は大日本プロレスで“めんどくさくて引っかかる”存在感が際立っている。蹴り技やフィニッシュのライジングDDTは父の“系譜”。しかし父から何かを教わったというわけではない。“めんどくささ”もそうだ。ビル・ロビンソンの愛弟子で“偏屈者”とも呼ばれる鈴木秀樹の影響かもしれないと大地は言う。
「IGF所属時代に一緒だったし、大日本でもさんざん闘ってますからね。“鈴木秀樹だったらどうする?”みたいに考えたこともありましたよ」
13歳で父を亡くしたから、直接プロレスの指導を受けたことはない。キャリアを重ねながら、自分のプロレスを人任せにすることもやめた。だからこそ、父が生きていたら“プロレスラー・橋本大地”をどう思っていたのかには興味があるという。