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EURO2024“神回”の理由は戦術でもテクノロジーでもない…“嫌われた監督”サウスゲイト采配、ヤマル17歳は高校の宿題→ゴラッソのドラマ性 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byMutsu Kawamori

posted2024/07/14 17:01

EURO2024“神回”の理由は戦術でもテクノロジーでもない…“嫌われた監督”サウスゲイト采配、ヤマル17歳は高校の宿題→ゴラッソのドラマ性<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

17歳のバースデーを迎えたラミン・ヤマル。欧州の頂上に立つのは超新星候補擁する無敵艦隊か、それともフットボールの母国か

 愛嬌ある風貌のマルク・ククレジャがボールを持つたびにブーイングされているのは、ドイツとの準々決勝の延長後半に、ボックス内でジャマル・ムシアラのシュートが彼の手に当たったのに、お咎めがなかったからに違いない。

 その後に、ミケル・メリーノの決勝点でドイツが涙を飲んだのだから、開催国のファンはその鬱憤をぶつけるようにカーリーヘアのラテラルを詰っているのだ。きっとこれは決勝でも続くだろう。

 1998年W杯の準決勝でフランスの主将ローラン・ブランと競り合い、大袈裟なジェスチャーでブランを退場させたスラヴェン・ビリッチが、次の3位決定戦でボールを持つたびに、激しくブーイングされたようにーーただしククレジャは演技をしておらず、あくまで審判の判断だということを踏まえると、アンフェアにも思えるが。

戦術やテクノロジーが進化しても最後はやはり…

 ククレジャのような特徴ある役者の存在が、2024年のドイツ大会を彩っている。また、どれだけ戦術やテクノロジーが進化しようとも、結局のところ、ピッチ上で最後に違いを生み出すのは特別な個の力だと、今大会であらためて感じた。

 そして両ファイナリストには、きらめくタレントが何人もいる。

 フィル・フォデン対ロドリのマンチェスター・シティ対決、カイル・ウォーカー対ニコ・ウィリアムスのスピード勝負、ブカヨ・サカとククレジャが対峙する逆サイドの攻防など、見どころは多い。それでもこの大会で最大の注目を集めているのは、両チームの若きエース、大会中に21歳になったベリンガムと17歳になったばかりのヤマルだ。

 通常、こうした大きな舞台で力を発揮するには経験が必要だが、彼ら天才は例外となる。どちらもチームが必要としている時に、決定的な仕事ができるスーパースターだ。直前のシーズンでは、レアル・マドリーとバルセロナのシャツを着てエル・クラシコで3度対戦しており、計3得点と1アシストを記録したベリンガムが全勝している。

宿題と労働法とメッシとの縁…ヤマルの話題で持ち切り

 ただし、日本の高校2年生にあたるヤマルは、この大会で試合を重ねるたびに急成長しているように見える。キャンプに学校の宿題を持ち込み、オンラインで授業も受けている“時の人”は、フランス戦のあの鮮烈な一撃について「トップコーナーを狙って放った」と言う。

 また、18歳以下は23時以降に仕事をしてはならないというドイツの労働法に抵触する可能性や、乳飲み子の時にたまたま家族が応募したフォトセッションでリオネル・メッシに抱っこしてもらった時の写真──フットボールの生き神に触れられたことで特大の才能が宿ったか──などなど、様々な話題を提供している。

 驚異の超新星ヤマルや大会最優秀選手候補のロドリらを擁するスペインには、休養日が1日多いアドバンテージもある。

 過去3大会の決勝では準決勝を先に行なったチームが勝っているように、これは無視できないポイントだ。だが今大会のイングランドは、何度も逆境を跳ね返してきたチームだ。ケイン、ベリンガム、サカ、そしてジョーカーたちと、苦しい時に頼りになる選手も多い。

 質の高いフットボールとドラマに満ちたEURO2024が、ついに最終戦を迎える。日本時間7月15日(月)早朝4時、新たな欧州王者を決するキックオフの笛がベルリンの夜に鳴り響く。

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