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EURO2024“神回”の理由は戦術でもテクノロジーでもない…“嫌われた監督”サウスゲイト采配、ヤマル17歳は高校の宿題→ゴラッソのドラマ性
posted2024/07/14 17:01
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Mutsu Kawamori
欧州随一のタレントを揃えるイングランドと、今大会のベストチームであるスペイン──。スリーライオンズとラ・ロハが激突するEURO2024決勝は、充実した大会のフィナーレにふさわしい大一番となりそうだ。
際どい勝利を手繰り寄せたサウスゲイト采配
自国開催ではない主要大会のファイナルに初めて進出したイングランドは、悲願の欧州選手権初優勝を狙う。グループステージを1勝2分で首位通過したものの、全般的に慎重なプレーが目立ち、フットボールの母国からも不満の声が上がっていた。
だが決勝トーナメントに入ってから徐々にパフォーマンスを上げ、3試合連続で逆転勝利(準々決勝のスイス戦は同点に追いついた後のPK戦を制した)。批判の矢面に立っていたギャレス・サウスゲイト監督は、優勝に照準を合わせて、大会終盤にチームがピークを迎えるように調整していたのだろう。
しかも指揮官の絶妙な采配が、際どい勝利を手繰り寄せてきた。
スロバキアとのラウンド16では、疲れが見えていた両エース、ジュード・ベリンガムとハリー・ケインの「類稀な能力」を信じて交代を思いとどまり、その2人の得点で突破。次のスイス戦では失点直後に3人を投入して流れを引き寄せて同点とし、オランダとの準決勝では同点で迎えた終盤に送り出したコール・パーマーのアシストから、同時に途中出場したオリー・ワトキンスが見事な逆転ゴールを決めている。
19歳メイヌーを先発起用し続ける胆力
それらを決して自身の手柄と考えないサウスゲイト監督は、オランダ戦の直後にこう話した。彼らしい思慮深いトーンで。
「選手たちのパフォーマンスのクオリティーは突出していた。途中出場したふたりの連係(からの決勝点)は、このチームの集団としてのスピリットを顕示している。ここ5、6週の間に、彼らが築き上げてくれたものだ。控え選手にも下を向いている者はひとりもおらず、来るべき時のために万全に準備してくれている。オリー(・ワトキンス)がその瞬間をしかとモノにしてくれて、私も本当に嬉しいよ」