球体とリズムBACK NUMBER

EURO2024“神回”の理由は戦術でもテクノロジーでもない…“嫌われた監督”サウスゲイト采配、ヤマル17歳は高校の宿題→ゴラッソのドラマ性 

text by

井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

PROFILE

photograph byMutsu Kawamori

posted2024/07/14 17:01

EURO2024“神回”の理由は戦術でもテクノロジーでもない…“嫌われた監督”サウスゲイト采配、ヤマル17歳は高校の宿題→ゴラッソのドラマ性<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

17歳のバースデーを迎えたラミン・ヤマル。欧州の頂上に立つのは超新星候補擁する無敵艦隊か、それともフットボールの母国か

 決勝トーナメントに入ってから、守備的MFデクラン・ライスの相棒に19歳のコビー・メイヌーを先発で起用し続けていることも、好調の要因のひとつだろう。マンチェスター・ユナイテッド生え抜きのMFは、落ち着き払った自信満々のプレゼンスで、強くて正確なパスを繰り出し、球際ではサイズ以上の強さを発揮して、ボールをキープしたり奪ったりする。

「スペインが優勝に近い」と指揮官は謙遜

 ただし大会を通じた両チームのパフォーマンスを比較すれば、ほとんどの人がスペインに分があると見ている。それはサウスゲイト監督も同じだ。

「スペインはとてつもなく良いチームだ。この大会での足取りを見れば、彼らが優勝に近いと考えられて当然だ」

 今大会で唯一、全勝を維持するスペインはスタッツの上でも、相手を凌駕している。

 得点13、失点3、シュート数108、枠内シュート数37はすべて大会ベスト(失点はベスト8以上のチーム中最少タイ)。さらにボール回収数255、タックル数74に加えて、ファウル数83──しかも個人ではFWアルバロ・モラタの12──までトップであることをふまえると、“ティキタカ”と呼ばれた黄金期のポゼッションスタイルとは異なり、ハイプレスやトランジションを主眼としていることが統計からも理解できる。

 実際、イングランドにわずかに劣っている数少ない数値が、ポゼッション(イングランド:58.8%、スペイン:57.3%)やパス成功率(イングランド:90.3%、スペイン:90%)なのだ。

ヤマル、オルモのゴラッソの一方で、ククレジャは

 フランスとの準決勝では、9分に先制されたものの、その12分後にラミン・ヤマルが見事な長距離砲を左のトップコーナーに落とし、EURO本大会で初めてネットを揺らした16歳に。さらにダニ・オルモがボックス内で完璧なファーストタッチから巧みに決めて3試合連続得点を挙げた。

 優れたクラブチームのような代表を築き上げながら、常に「選手たちを誇りに思う」と言うルイス・デ・ラ・フエンテ監督が束ねるスペインは、残り65分を組織的なプレスや集中した守備でしのぎつつ、時にはかつての“時計仕掛けのボール回し”を再現して敵をいなした。

【次ページ】 戦術やテクノロジーが進化しても最後はやはり…

BACK 1 2 3 NEXT
#ラミン・ヤマル
#ギャレス・サウスゲイト
#コビー・メイヌー

海外サッカーの前後の記事

ページトップ