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野球クロスロードBACK NUMBER
大谷翔平の甲子園を阻止…あの“ポール際の一発”を放った「盛岡大附の4番」が野球を続けるワケ「大谷選手が…みたいなのはないですよ」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by(L)Sankei Shimbun、(R)JIJI PRESS
posted2024/07/09 11:04
大谷翔平の最後の夏を打ち砕いたホームランを放った二橋大地(左)は今季から三菱重工Westに移籍し、いまでも野球を続けている
純粋に思う。なぜ受けるのか?
「そこまで深く考えたことはないんです」
そう切り出し、胸中を明かす。
「本当に正直なことを言えば、会社が受けたからというか。僕たち社会人野球の選手は、競技を通じて社内外に発信していく立場でもあるので。当時は『もっと頑張らないと』と必死でしたし、大谷選手のこととか考える余裕がなかった部分はありました」
がむしゃらに突き進んで8年目。気が付けば、盛岡大附の同期で今も現役は自分だけとなり、社会人野球を見渡しても同世代は年々、ユニフォームを脱いでいく。
そんななか、自分は三菱重工Westという新たな働き場所を与えられた。
きっとそれは、幸福な野球人生のはずだ。
「だから、1年でも長く野球をやりたいという気持ちは強くなりますよね」
二橋がそう決意を打ち出した。
「大谷選手が頑張っているから、みたいなのはない。ただ…」
メディア特有のこじつけ。記者の記事構成に当てはめようとする魂胆が丸見えの質問――そんな前置きをした上で聞いた。
1年でも長く野球を続けるモチベーションのひとつに、大谷の存在はあるか?
「大谷選手が頑張っているから自分も頑張る、みたいなのはないです。ただ、今でもこうやって取材をしていただけるわけですし。人よりは少なからず大谷選手絡みの話題を作ってしまった立場としては、自分から辞めるわけにはいかないですよね」
もし、ユニフォームを脱ぐときが訪れたら、二橋にはちょっとした計画がある。
アメリカまで大谷の応援に行くことだ。
「社会人10年目になったら1週間くらいリフレッシュ休暇をいただけるんで、そのタイミングで行くこともできるんですけど、2年後……どうでしょうね。大谷選手は40くらいまで普通に第一線でやっていると思うんで、別に焦ることはないのかなと。その頃には僕の子供も大きくなっているし、今よりは家族で旅行しやすくなっているだろうし」
少し嬉しそうに、二橋が将来的なプランを想像する。家族と言えば、ふたり目の子供は男の子だった。ひょっとして、名前は――。
大きくかぶりを振り、父親が爆笑する。
「翔平じゃないです! さすがに、それだけは……」
<つづく>