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大谷翔平の甲子園を阻止…あの“ポール際の一発”を放った「盛岡大附の4番」が野球を続けるワケ「大谷選手が…みたいなのはないですよ」
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![田口元義](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/5/-/img_75003d1c8e96afbf93ce622c330de78e8574.jpg)
田口元義Genki Taguchi
photograph by(L)Sankei Shimbun、(R)JIJI PRESS
posted2024/07/09 11:04
![大谷翔平の甲子園を阻止…あの“ポール際の一発”を放った「盛岡大附の4番」が野球を続けるワケ「大谷選手が…みたいなのはないですよ」<Number Web> photograph by (L)Sankei Shimbun、(R)JIJI PRESS](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/0/9/700/img_09b92873f6aefb8afa82d02b7805d2ed464475.jpg)
大谷翔平の最後の夏を打ち砕いたホームランを放った二橋大地(左)は今季から三菱重工Westに移籍し、いまでも野球を続けている
相談した知己のなかでも「関口先生の言葉は大きかった」と語る二橋ではあったが、最終的な決断は家族だったのだという。
妻の和花子はふたり目となる息子を出産したばかりで勤めている会社を育児休暇中であるし、保育園に通う娘も友達ができるなどようやく環境に慣れ始めたところだった。
「一番の壁が家族でした。僕も妻も関西に住んだことがありませんし、知り合いもいませんし。いろんな人に相談はしましたけど、やっぱり僕の意志だけでは決められないな、と。妻がちょっとでも渋るような反応を見せたら『行かない』と決めていました」
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Westへ移籍はしない。それはつまり、「プレーヤーの引退」と同義だとも解釈できる。二橋は「続けたい気持ちはありますけど」と前提を述べつつ、現実を受け入れるつもりだったと述懐する。
「Eastに残れるのなら残りたいですけど、そこでもし『終わりだよ』と言われたらそこまでなので。その覚悟はありました」
逡巡から決断のとき。二橋が妻に、真っ直ぐな想いを伝える。
「関西には知り合いが誰もいないし大変だろうけど、環境を変えてもう1回、頑張りたい」
すると、妻は「行こうよ」と即答した。
「『そんな軽い感じなんだ』って(笑)。でも、そのくらいがありがたかったです」
「大谷は1000億なのに、二橋はいくらだよ(笑)」
12月。二橋のWest移籍が正式に決まった。それは奇しくも、エンゼルスからFAしていた大谷翔平のドジャース入団が発表された時期と同じだった。10年7億ドル。当時の日本円にして約1015億円の大型契約を結んだスーパースターを引き合いに、会社の同僚からいじられる。
「大谷は1000億なのに、二橋に支給される支度金はいくらだよ(笑)」
二橋が「大谷ネタ」で笑いを誘われるのは、移籍のタイミングが被ったからだけではない。同僚たちも、ふたりが野球人生において交錯した経緯があることを知っているからだ。
今では不快になることもなく、ごく自然にやり過ごすことができている。
「学生時代からそんなことを言われながら過ごしているんで、慣れたといいますか。僕としては“あの試合”なしではここまで野球をやれていないと思うんで、言われることが嫌かと言われればそうでもなくなりました」