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「スキルはユウキ、顔はランかな(笑)」男子バレー日本代表が海外でも大人気なワケ… 記者も驚いたフィリピン熱狂の夜「彼らは実写版ハイキューだ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2024/07/03 11:03
パリ五輪でもメダルが期待されるバレーボール日本代表。国内だけに留まらず、世界からも注目を集めている
続けて、日本の男子バレーの魅力を問うと、嬉しそうに言った。
「日本の高度な戦術がどれほど素晴らしいか、私には正直わからない。けれど、ストレートに見ていてとても楽しい。選手にも個性があって、次は何をするのか――とにかく日本はいろんなプレーをするでしょう? それが楽しいし、ユウキやユウジがいるだけでなく、ケント(宮浦健人)、カイ(甲斐優斗)、新たな世代の選手も続々出てくる。この先10年も日本はきっと強いのだろう、と期待したくなるし、何よりみんなハンサム(笑)。フィリピンからも近い日本には実際行くことができるし、日本からフィリピンを訪れるファンも多い。私たちも、日本チームは私たちのホームチームだと思っているんですよ」
彼女の口からは、日本代表だけに限らず各国のスター選手の名前も次々と飛び出していた。アメリカ代表のマイカ・クリステンソンやブラジル代表のブルーノ・レゼンデ、オランダ代表のニミル・アブデルアジズ……。日本が世界の強豪に仲間入りしたことを実感した。
さらに、それは記者が選手を取材するミックスゾーンでも。
テレビ局だけでなく、地元メディアの記者たちが集結。Web媒体が発達するフィリピンらしく、記者のほとんどはスマートフォンを片手に取り囲み、選手が移動するたびに人だかりができていた。「話を聞ける機会を楽しみにしていた」というリポーターの彼女も嬉しそうに笑った。
「私のお気に入りはバレーボールスキルならばユウキ・イシカワ。でもハンサムだなぁと思うのはラン・タカハシ(笑)。フィリピンの女性の中には、彼らを自分の息子のように応援している人も多いですよ」
実感した「ハイキュー!!」効果
もう一つ、フィリピンに熱狂を生み出している要因が、漫画『ハイキュー!!』の影響だ。すでに全世界でアニメ化され、今年公開された映画は日本でも大ヒットを記録している。
アニメ人気が国境を越えることは珍しくなく、これまで取材に訪れたドイツやイタリアでも「日本から来た」と答えると「『ハイキュー!!』が大好きだ」「あなたは『ハイキュー!!』のキャラクターで誰が好き?」と目を輝かせる現地の人たちに会う機会が多々あった。フィリピン会場でもその人気は健在だった。
主人公が所属する烏野高校バレーボール部のユニフォームTシャツに「必勝」のハチマキを巻いたフィリピン人男性は、ネーションズリーグには何度も通っていると目を輝かせていた。「国歌演奏で日本の選手と同じように観客席にいた自分の顔も映った」と、昨年大会の中継映像を見せながら、嬉しそうに語った。
「日本のアニメは大好きだけれど、特に『ハイキュー!!』が大好き。ストーリーが素晴らしくて、バレーボールを知らない人にも『ハイキュー!!』を見たらすべてわかるよ、と伝えているんだ」
繰り返し、セリフを覚えるほどに見続けた大好きなアニメ。彼に言わせれば、その“実写版”が現在の男子バレー日本代表なのだという。
「日向はユウジ、影山はセキタサン、牛島はケントかな。小さなチームが自分たちよりも大きな相手に、システムとスキルでチャレンジする。大きな敵を倒す日本の姿を見ると、『ハイキュー!!』を見ている時と同じように、最高の気持ちになるよ」