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「野茂があんなに笑うなんて」野茂英雄がアメリカで初めて見せた表情…優勝決定の直前、“あの名医”が姿を現し「球速が約20キロ上がった」記者の証言 

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喜瀬雅則

喜瀬雅則Masanori Kise

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photograph byKoji Asakura

posted2024/07/11 11:05

「野茂があんなに笑うなんて」野茂英雄がアメリカで初めて見せた表情…優勝決定の直前、“あの名医”が姿を現し「球速が約20キロ上がった」記者の証言<Number Web> photograph by Koji Asakura

高校、社会人、そしてプロ野球でも優勝経験のなかった野茂英雄。ドジャースの地区優勝を目前にした1995年夏に起きていたのは…

「おめえ、クレアに『優勝旅行はどこに行くんですか?』って聞いたのか?」

 呆れたような表情だった。

オフは球団に拘束されないメジャーリーガー

 メジャーリーガーは、契約内容がかっちりしている。なので、優勝旅行のようなシーズン後にチームが“拘束”するような行事など、まずあり得ないのだという。その背景が分かっていれば、クレアへの質問は超愚問なのが明らかというわけだ。

 しかし、無知と若さゆえの直撃取材。今から思えば、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。クレアも、笑い話の一つとして、もちろん少々の抗議も含めて、旧知のパンチョに「日本人記者に、こんなこと聞かれたんだよ」と明かしたのだろう。

 それでも、優勝目前の9月30日付、サンケイスポーツ大阪本社版の1面にはちゃんと、そのクレアの困惑談話とともに「派手な祝勝会はないメジャー」という見出しで、メジャーにおける“V旅行事情”として説明が掲載されることになる。

 これも帰国した後、新聞を読んで知ったのだが、野茂のパドレス戦登板翌日、9月27日付サンケイスポーツ大阪本社版の1面は「首位奪回 野茂」「胴上げ投手だ」。

ザ・デストロイヤーがやってきた!

 見出しは野茂だが、この日は先発しておらず、大きく紙面を割いた記事では三番マイク・ピアザの2点タイムリー、四番エリック・キャロスの逆転打を取り上げ、ロッキーズとの天王山初戦を制した「青い戦士たち」の激闘を伝えていた。

 続くロッキーズとの2戦目、試合前にプロレスラーのザ・デストロイヤーが、トレードマークの白い覆面をかぶり、ドジャースタジアムに姿を見せた。足4の字固めが必殺技で、力道山やジャイアント馬場といった日本プロレス界のレジェンドたちと戦ってきた覆面レスラーが、野茂を激励にやって来たのだ。

【次ページ】 不調でまわってきたマジック「1」での先発

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