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“慶應ボーイ”ハードラー・豊田兼(21歳)が「195cmの超フィジカル」と「緻密な計算」でパリ五輪内定…「イチかバチか」攻めの決断で見せた圧勝劇
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byYuki Suenaga
posted2024/06/29 17:04
日本歴代3位の好記録で400mハードルでパリ五輪を決めた慶大4年の豊田兼。規格外のフィジカルも含め、世界の舞台での大躍進も期待される
このタイムを再現できれば、パリ五輪では十分に決勝進出が狙える。ひと昔前であれば、メダルも狙えるタイムだが、近年は世界のレベルも上がっており表彰台に上がるにはもうひと伸びが必要だ。それでも、豊田のこの1年の伸び幅を見れば、思わず期待したくなる。
シニアの国際大会はパリ五輪が初めてとなるが、父の母国・フランスで開催される五輪でどんな走りを見せてくれるのか、ますます注目を集めることになりそうだ。
ちなみに400mハードルでパリ五輪を決めた豊田だが、実は110mハードルでも日本トップクラスの実力を誇る。
「この2種目を両立してやれる選手は、国内では自分しかいないのかなと思う部分もあるので、新しいロールモデルのようなものを目指して、両立したい」
日本選手権の前日会見では、そんなことを話していた。
400mハードルにつづく「二刀流」の行方は?
昨年8月のワールドユニバーシティゲームズでは、この種目で優勝を果たし、大学生世界一に輝いている。日本人が五輪や世界選手権を含め世界大会で110mハードルの金メダルを獲得するのは史上初めてのことだった。実は400mハードルよりも先に、この種目で国際舞台でものすごい実績を上げているのだ。
2種目での五輪出場を目指し、110mハードルの予選も順当に組トップで通過したものの、ハムストリングスの違和感から準決勝を棄権という決断となった。だが、昨年のブダペスト世界選手権5位の泉谷駿介(住友電工)ら、ハイレベルな争いを繰り広げるトップランナーがいる種目で戦うことは、パリ五輪以降の東京世界陸上、ロサンゼルス五輪を見据えても豊田にとって意味のあることなのだろう。
「今まで種目を絞らずにやってきたので、そのままの流れで、シンプルに2種目を楽しんでやりたいという思いもある」
さまざまな意味で規格外の実力を持つホープ。まずはパリの地の400mハードルで、どんな走りを見せてくれるだろうか。