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「ジャッポーネ感動した、名勝負だ!」日本女子バレー銀メダルをイタリア実況アナ絶賛「一番驚かされたのは古賀紗理那や石川真佑ではなく…」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byVolleyball World
posted2024/06/26 11:02
VNLで銀メダルを獲得したバレーボール女子日本代表。準決勝では世界1位ブラジルを撃破し、「大会ベストゲーム」と評された
「個人能力の高さをチームとして融合、昇華させたのが今大会のイタリアの勝因だ」
決勝後、イタリアを率いてVNLを制した代表監督フリオ・ベラスコは総括した。
御年72歳のベラスコは国際バレー界にその名を知らぬ者なしといえるほどの世界的名将。1年前の欧州選手権に端を発する代表チーム内紛と前監督ダビデ・マッザンティ辞任を受け、昨年末に女子代表指揮官へ25年ぶりに復帰した。孫ほどの年齢の選手たちと挑む、初めての大きな国際大会だった。
絶対的エースを気持ちよくプレーさせることを最優先し、相手の注意を向けさせることで残りの選手たちにも伸び伸びと能力を発揮させる“戦術エゴヌ”を貫いた智将の采配は見事に奏功した。ベラスコは「タイトルはチームとしての勝利であり、選手たち自身の勝利でもある」とも強調した。
これは裏を返すと、彼女たちを五輪本番で倒すには、大会のベスト6に選ばれた主将古賀紗理那やリベロ小島満菜美だけでなく、残りのメンバー、一人ひとりのさらなるレベルアップが必要ということだろう。
加えて、スポーツ大国イタリアの選手たちには、“決勝”と名のつく舞台になると、俄然闘志を倍加させる選手気質があることも記しておきたい。
ベストセッターを受賞したアレッシア・オッロ(イタリア)が、チームメイト全員の思いを決勝後に代弁している。執念がにじみ出ている。
「私たちにはこの後、より大事な目標(=パリ五輪)が控えています。だから、このファイナルには絶対に勝たねばならなかった。どんな形でもいいから、とにかく絶対に勝たねばならなかったんです」
“メダル戦線に割り込んできた厄介な相手”
日本にとって今回のメダルは2014年ワールドグランプリ(VNLの前身)以来、実に10年ぶりだった。長い間、国際大会のメダル争いから遠ざかっており、選手のみならず、コーチ陣やスタッフ含め頂点をかけた一世一代の勝負の経験不足は否めない。
だからこそ、今回の銀メダル獲得はパリ五輪に向けた大きな自信につながるはずだ。もはや日本と戦って楽に勝てる国はどこにもない。
新女王イタリアを始めとする世界のライバル国は、VNLで準優勝した日本を“パリ五輪のメダル戦線に割り込んできた厄介な相手”だと認識し始めた。
表彰式では誰もが歓喜に沸いていた。五輪本番に向け、日本ありと示した。
この笑顔の果し状こそ、もしかするとメダル以上に日本がVNLで得た価値ある収穫ではないか。