バレーボールPRESSBACK NUMBER

「コイツらすごくなるんだろうな…」石川祐希の代表デビューを知る永野健がしみじみ「笑顔かわいかったなー」“最強の仲間”を得たキャプテンの10年 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph byAFLO SPORT

posted2024/06/10 17:02

「コイツらすごくなるんだろうな…」石川祐希の代表デビューを知る永野健がしみじみ「笑顔かわいかったなー」“最強の仲間”を得たキャプテンの10年<Number Web> photograph by AFLO SPORT

石川祐希の日本代表デビュー戦で同じコートに立った永野健 (写真は2015年)

 石川が2014年に中央大学1年で日本代表にデビューした時、永野は代表のリベロだった。

「当時からスパイクの幅や思い切りのよさ、動じない気持ちというのは持っていましたけど、今ではもう本当に引き出しの量、柔軟性がすごい。何より一番変わったのはリーダーシップでしょうね」と世界的なアウトサイドに成長した姿に目を細める。

 石川が代表に合流して間もない頃、海外遠征で同室になったことがあるという。当時、石川は19歳、永野は貫禄たっぷりの29歳。

「あの笑顔はかわいかったですよ。今はなんかちょっとあいつも大人になってしまったけど。あの当時の笑顔がかわいかったなー」と顔をくしゃくしゃにして懐かしむ。

「あの時はお互いにあまり喋ってなかったですね。『石川どお?大丈夫?』って、それぐらい(苦笑)。

 あいつ当時は飯食えなかったんですよ、海外で。たぶん合わなくて。だからゆで卵の白身ばっか食ってました。当時から体のことを考えていたからだと思うんですけど。それはめちゃくちゃ覚えてますね(笑)」

「今後こいつらすごくなるんだろうな」

 今年5月に行われた黒鷲旗を最後に、永野は38歳で現役を引退した。黒鷲旗決勝の後、現役生活の中で印象に残った試合の一つに、2016年のリオデジャネイロ五輪世界最終予選を挙げた。

「僕は体の状態もよかったし、ピークだった。石川とか柳田(将洋)とか若い勢いが入ってきてくれて、『これは絶対(五輪に)行きたいな!』と思っていたけど、行けなかったっていう悔しさはね、そらデカかったですよ」

 ただその中で、日本男子バレーの明るい兆しを確かに感じ取っていた。

「当時の石川とか、柳田もそうでしたけど、向かっていく姿勢がすごかった。高いブロックや、強え相手だとわかっていても、それに立ち向かう勇気、姿勢。恐れずにバンバンバンバン行ける。自分たちでいろんなことを探っているし、アンパイなほうを選ばずに、チャレンジできる。だから人としても、プレーもデカくなる。今後こいつらはすごくなるんだろうなって、一緒にやっていて思いましたし、そういう選手を見て、どんどん周りにもいい選手が増えていって、今の日本代表があると思う」

 あれから8年。自力で五輪切符をつかみ取っている日本は、世界ランキング3位(6月10日時点)の堂々のメダル候補としてパリ五輪の舞台に向かう。

「本当にメダル獲ってほしいですよね。本当に獲れると思うし。マジで期待しています」

 永野が言うように、石川に触発されて次々に強い個が育ち、今の日本は石川主将頼みのチームではなくなった。最強のキャプテンが、最強の仲間を手に入れつつある。今夏、機は熟すに違いない。

関連記事

BACK 1 2 3 4
石川祐希
山本智大
西田有志
高橋藍

バレーボールの前後の記事

ページトップ