将棋もデビュー初年度の2020年度に31勝15敗の好成績を上げると、21、22年度と順位戦で連続昇級を決め（現在はB級2組）、2年連続での連勝賞も受賞しています。今年度に入ってからも竜王ランキング戦連続昇級で七段昇段を決めたのちに5組ランキング戦でも優勝するなど、20代の棋士の中でも進境著しい1人と感じています。

　棋風としては「どの戦型についても詳しく、苦手なものがない」という印象です。その柔軟性が、彼の安定した強さに繋がっているのではと見ています。だからこそ研究会、さらには今回のアベトナでも私自身の勉強になるはずと思っています。

2022年の将棋大賞表彰式で、藤井八冠らとともに表彰される渡辺和史七段（左端）　©JIJI PRESS

研究会のような雰囲気で実戦ができる

　皆さんも配信でご覧になっているかと思いますが、アベトナで対局していない棋士は楽屋で将棋を見ながら「この形ってどういう認識？」という感覚を教えてもらったりしています。研究会のような雰囲気でありながら、実戦を経験できる……という貴重な立ち位置にある大会とも言えます。

　もちろんチームとしてアベトナを勝ち上がっていきたいのが一番です。それと同時に自分自身、リーダーでありながらも成長して公式戦で生かしたいという思いがあるのは確か。大地七段と和史七段と一緒の時間を少しでも長く過ごすことで、できる限り多くのものを得たいと思っています。

　チーム中村の初戦は6月8日。そう、本日が初戦です。対戦相手はチーム渡辺です。2巡目指名で大地七段がかぶった間柄ではありますが（笑）、盤上での戦いはまた別のものです。フィッシャールールでの超早指し戦、私たちの戦いぶりに注目していただけるようなら嬉しいです。

＜第1回からつづく＞