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進取の将棋BACK NUMBER
「ああ、やっぱり。なす術がない」藤井聡太21歳はクジ運も「最善手」…“画面に映らない”羽生善治53歳ドラフト裏話を中村太地36歳が明かす
posted2024/06/08 17:00
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by
AbemaTV, Inc
将棋ファンにとってはお馴染みの存在となった早指し戦「ABEMAトーナメント2024」が5月11日に開幕しました。将棋ではとても珍しい団体戦であったり、棋士それぞれの意外な素顔を見られることもあって、将棋界全体にとっても広く認知していただける、貴重な棋戦だと感謝に堪えません。
さてそんな「アベトナ」、今回は私がリーダーの1人としてドラフト会議での指名から参加する機会を得られました(編集註:今回のドラフト会議参加リーダーは中村八段以外に藤井聡太八冠、渡辺明九段、広瀬章人九段、豊島将之九段、永瀬拓矢九段、斎藤慎太郎八段、菅井竜也八段、稲葉陽八段、佐藤天彦九段、佐々木勇気八段)。
せっかくですので、ファンの皆さんが知ってみたいな……と思うドラフト会議の舞台裏についてご紹介できればと思います。
アベトナのリーダーに入るのは1つの目標だった
私は今まで放送を見ている立場でしたが、あの場でドラフト指名ができるというのは大きな目標の1つだったんです。大会ごとにリーダーの決定方法はまちまちで、今期は「タイトルホルダー(藤井聡太八冠)+順位戦A級棋士」というもの。
とはいえ基本的に〈A級棋士がリーダーの中に入る〉という印象なので、実はA級に上がるとそういった機会も得られるというモチベーションを持って第81期の順位戦B級1組に臨んでいました(※9勝3敗で昇級)。実際、昇級を決めてホッとした後に「そうだ、リーダーとしての仕事が待っている……」という思いを持ったのは確かです。
参加前、ドラフト会場の雰囲気は、どちらかというとワチャワチャしているのかな……というイメージでした。でも実際にその現場に立ち会ってみると、和やかさと程よい緊張感が両立したような空間だったんです。休憩時間は読書をするなど、思い思いの趣味で時間を潰していましたね。その中で藤井八冠は「詰将棋パラダイス」をやっていてさすが、の一言でした(笑)。
ドラフト会議、現場の空気感はどんな感じ?
ドラフト会議の収録をしたのは、順位戦が佳境を迎えた頃でした。