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「泣きたい。もういやだ」出産→復帰のはずが大ケガ…アイシング中に「抱っこー!」“ミニ怪獣”の息子に元なでしこDF岩清水梓は救われた
text by
岩清水梓Azusa Iwashimizu
photograph byMiki Sano
posted2024/06/08 06:02
公式戦復帰までに負傷と育児という想定外の出来事が続いた岩清水梓。ただ、息子の存在に救われたという
「あれ? そういえばウチには“怪獣”がいた……よね?」
うっかりしていた。気持ちが塞いでいるとか言っている場合じゃなかった。こちらの気分や事情とは関係なしに、家には全力で甘えてくる、1歳半になったかわいい“怪我の大敵”が待ちかまえているではないか!
アイシングしてても「抱っこー!抱っこー!」
自宅での生活は、常に恐怖と隣り合わせだった。
怪我の治療とリハビリにおいては、トレーニング以外の時間は、基本的に安静にしているのが常識だ。あまり足を使わないように、負担をかけないように過ごすのだが、それは見事に叶わなかった。
たとえ固定された足を引きずりながら帰っても、家に帰れば「遊んでー!」とミニ怪獣がやってくる。膝にしているアイシングなど、もちろん彼には見えていない。
リハビリも、きちんと過程を組んで進めていくのが当たり前で、加重のかけ方にもある程度の段階がある。だが、ミニ怪獣はそんなことは気にしない。
「抱っこー! 抱っこー!」
要求が始まれば、もう止められない。仕方なく、12キロを持ち上げる。せめてもの対策として、できるだけ怪我をしていないほうの足に重心をかけながら。そのまま、階段の上り下りだってした。負荷をかけちゃいけないのに。でも、ミニ怪獣はうれしそうだから、しょうがない。
とにかく、膝にだけは飛びかかってきませんように。ここにだけは落ちてこないで。この上なく緊張感にあふれた日々だった。
それでも、ママ業に休みはない。台所に立ったり、お風呂に入れたり。膝を曲げられないっていうのに……肝心の足が全然休まらない!
それは寝ているときも同じだ。息子のほうが早く起きてしまって、ジャンプして「ドーン!」とかやってきたら、もうおしまいだ。寝るときまでも気が休まらないとは、こんな怪我は初めてだった。
リハビリ期間の時間が過去最高に早く感じた
しかし、そのおかげで、リハビリ期間中の時間が過ぎ去るのが、過去最高に早く感じたのも事実だった。