毎日、リハビリから帰宅すると、息子にとってはいつも通りのママとの日常がある。足を気にしながらも、あれもこれもと子育てに追われていると、バタバタしていて時間が経つのはあっという間だった。

　振り返れば、実はミニ怪獣に助けられていたのかもしれない、と気づく。普通なら、開幕前に怪我をするなんて、選手であればすごく落ちこむシチュエーションだ。しかも今回は、せっかくここまでがんばってきたのに……としばらく引きずってしまってもしょうがないくらいのタイミングだった。

結果、彼に救われたわけだ

　それなのに、家に帰ればそれを考えさせてくれる暇もない、落ちこむ時間すら与えてもらえなかったということは、もしかしたら、私、助かっちゃったのかなと、考える。一人だったらきっと相当落ちこんで、乗り越えるのにも時間がかかっただろう。たしかにちょっとした恐怖とは隣り合わせだったけれど、結果、彼に救われたわけだ。

©Miki Sano

　なかば荒療治のようだけれど、こういう乗り越え方もあるんだな、と思うと、ちょっとうれしくなった。とはいえ、もう怪我もリハビリもこりごりだけど。
＜つづく＞