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「引退後、家族でゆっくり過ごす予定ですか?」質問に岡崎慎司の妻が話した答えは…家庭にもピッチの仲間にも“岡ちゃん”が愛されるワケ
posted2024/06/03 17:02
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Takuya Sugiyama
岡崎慎司は「記憶の人」なのか、それとも「記録の人」なのか。
彼ほどバラエティに富んだエピソードを持つ人はいない。だから、「記憶の人」のように見える。
「久しぶりだね。どんな感じでやっていたっけ? 忘れちゃってるね」
岡崎家でそんな会話がかわされたのは、5月17日の現役生活最後の試合のために岡崎が家を出る直前のことだった。
悔しさがないといったらウソになる
ドキュメンタリー映像などで、試合前に先発する選手がロッカールームを出る際、ベンチスタートの選手がハイタッチして送り出す様子を見たことがある人は多いだろう。レスター時代に、岡崎はそれと似たような形で家族とハイタッチしてから試合へ向かうようになった。それ以前には、家族で円陣を組んでから試合に向かっていた時期もある。
先輩に愛される一方、後輩に対しては偉そうにふるまうことなく、同じ目線で仲間のように過ごせるのが岡崎だ。2人の愛息にとっての兄のようなつもりで、子育てを心がけていた時期もある。
岡崎はラストマッチとなった5月17日のOHルーベン戦で、今シーズン初めてスタメンに名を連ねることになっていた。だから、チームに欠かせない選手として、毎試合のようにスタメンで出場していた時と同じ儀式で家から送り出された。
引退を決めたのは、痛めている膝の状態が良くならないことも影響はしている。しかしそれ以上に、「自分のモチベーションが尽きたことが最大の理由」と自身のオウンドメディア(Daialogue w)などですでに明かしていた。
悔しさがないといったらウソになる。
たとえば、サッカー選手としての生き方もそうだ。
岡崎は、先輩たちのアドバイスや言葉に聞き耳を立て、その後ろ姿を目に焼き付け、成長してきた選手である。中山雅史、佐藤由紀彦、森岡隆三、中村俊輔、市川大祐……。数え切れないほどの先輩から成長するための養分を吸収して、花を咲かせてきた(若手時代には佐藤や森岡から、洋服ももらっていた)。
「自分が憧れてきた先輩って……言葉が悪いかもしれないですけど、相手が若いかどうかなど関係なく、抜かれたら後ろから削るくらい必死になってやっている人たちだったんですよ。『プロの世界って、それくらい厳しい場所なんだ』みたいな感じで」
「あぁ自分って、そういうレベルなんだ」って
シント・トロイデンに来てからの2シーズン、若手選手にはたくさんの刺激を与えてもらったことに感謝しているのだが――歯がゆい思いを味わうことの方が多かったかもしれない。