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「今年は楽しかったなあ」最終決戦直前…堀江翔太が語り出した“常勝軍団ワイルドナイツ”強さの継承「三洋は貪欲な人が多かった」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/05/17 11:05
いよいよプレーオフが始まるリーグワン。堀江翔太は有終の美を飾れるか…と周囲は騒ぎ立てるが、本人は至って自然体だ
堀江は、「これを残したい」という言い方はしない。
「なんですかね。後輩からメンタルについての相談を受けたりすることもありますが、『これ、やっとけば間違いないから』とは言えないです。僕が思ってることが相手にハマるかどうか分からないし、ラグビーって正解というものがない競技だと思ってるんで」
FWとしてのスキルも、ダイレクトに伝えようという思いはない。ジャッカルのスキルは、昨年のW杯でも熟達したものを見せてくれた。スキルの継承は重要に思えるが、堀江は「感じてもらう」ことが大切だと考えている。
「ボールキャリアーになった時の間合いだとか、ブレイクダウン周りの判断、スキル。そのあたりの目に見えるところは、しっかりやってきたと思ってます。自分が常にやりたいと思ってきたプレーは、最後までできたかな。あとは、後輩たちがどう感じるかだと思うんですよ。真似したいと思ってくれたらそれでいいですから」
押しつけがましいところがないのだ。
「もっとがっつり『堀江教』を広めた方がいいんですかね?」と笑うが、淡々と自分の仕事をするのが堀江の性分なのだろう。
「坂手が80分プレーしたら楽やなあ」
そしていよいよプレーオフが始まる。
ワイルドナイツはレギュラーシーズン16戦全勝。盤石の強さを見せつけてきた。
「去年は決勝で負けて、プレーオフで負けてしまったら、本当に元も子もないんで。これまで通り100%の力を出す。それが大切じゃないですかね。強さの秘訣ですか? ディフェンスはいい形で仕上がってきました。何年か前に作った戦術から、布巻(峻介)が中心になって個人の働きかけが向上してますし、相手の分析も細かくなって、レベルが上がってます。良い試合をお見せしたいですね」
足かけ17年に及ぶワイルドナイツでの生活もフィナーレが近づいてきた。この期間は、日本のラグビー、そしてワイルドナイツのカルチャーにも変化があった。
「プロ化して、ラグビーの質も変わってきて、個人の管理能力も上がりました。昔は試合が終わったら、みんなで飲むのが好きでした。でも、いまは次の週も試合があったら、飲まなくなりました。それでも、今年は楽しかったなあ。コロナ禍も終わって、バイウィーク、翌週の試合がないときは、僕の家でバーベキューやったりして、後輩と過ごす時間も多くて」
こうして、ワイルドナイツのカルチャーは後輩たちに引き継がれていくのだろう。それでも、いちばんの財産は優勝することだ。ところが、最後のプレーオフに向けても堀江は淡々としている。
「プレーオフでも、チームが上手いこと行って、先発の坂手(淳史)が80分間プレーしたら楽やなあと思ってるんです(笑)」
いやいや、そういうわけにはいかないだろう。
ミスター・ワイルドナイツの仕事っぷりを、みんな目に焼きつけたいのだから。