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「今年は楽しかったなあ」最終決戦直前…堀江翔太が語り出した“常勝軍団ワイルドナイツ”強さの継承「三洋は貪欲な人が多かった」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/05/17 11:05
いよいよプレーオフが始まるリーグワン。堀江翔太は有終の美を飾れるか…と周囲は騒ぎ立てるが、本人は至って自然体だ
「ディフェンスシステムは、頭の中に入ってます。2019年W杯の前か後あたりから、チームディフェンスの設計に携わり始めたので、それがいい形で今まで進化してきました。それがどんなものか? 引退してからでないと話せないですね(笑)」
システムは作った。しかし、試合中の判断は最終的には個人に委ねられる。だからこそ、コミュニケーションが大切だという。
「練習で、ディフェンスの約束事はみんな理解してます。でも、試合になったら、隣の選手が何を思って立ってるのか分かりませんからね。自分はどこを見ているのか、相手の誰をマークしているのか声に出すだけでいいんです。だから、声を出せば自然と穴は少なくなっていきます」
「ドカーンとぶちかませる選手だったら…」
アタックでも堀江の「俯瞰力」はワイルドナイツの武器になってきた。
「スクラムハーフとスタンドオフって、意外に視野が狭くなりがちなんです。ボールの位置を意識しなきゃいけないし、仕事が多いからたいへんなんですよ。僕は自分が見えてる情報を伝えます。アタックでパスの局面だったら、FWに持たすのか、BKに持たすのか、ショートなのか、ミドルなのか。パスの受け手も浅い位置で立つのか、それとも深いところから走りこむのか、いろいろあります。それから外にも選択肢があって、そこにキックも入ってくる。無限とは言いませんけど、たくさんオプションがあるので、自分が見えているものを9番、10番に伝えるのは大切だと思ってます。みんなの考えが一致してアタックした方が効果的ですから」
堀江は試合中の自分の仕事を、こう定義する。
「司令塔が情報を処理する前の、情報のオプションを提供する」
その伝達手段が声であり、喋りなのだ。そうなったのは、自分の身体的特性も影響していると堀江は言う。
「僕がフィジカルめっちゃ強くて、相手をドカーンとぶちかませる選手だったら、言葉は要らないかもしれないですよね。でも、体も小さいし、コミュニケーションを取らないことには勝負できなかったんで。僕がやり続けてきたことを、ワイルドナイツのみんなが受け継いでくれたらうれしいですけどね」