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「打った瞬間に行ったなと…」筒香嘉智がDeNA復帰戦で“打つべくして打った”本塁打の真相「自分の中ではもう大丈夫だと思ったんです」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/08 11:06
復帰戦で逆転の3ランを放った横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智。活躍の裏にあった真相とは…
「その瞬間にパチっと嵌って、自分の中ではもう大丈夫だと思ったんです」
この試合に「4番・左翼」で先発した筒香は第1打席は二ゴロに倒れ、迎えた3回の第2打席のことだった。ヤクルト先発・原樹理投手の2球目、インコースのストレートを高々と打ち上げた。
結果は平凡な中飛だった。
「実はアメリカで向こうのコーチから、ずっとテークバックしたときに、左足の膝を投手寄りに寄せたままにして、足の甲の上に膝を寄せるなと教えられて、やってきたんです」
投球動作が早く、あまり間のないメジャーの投手に対応するための指導だった。日本のように1回、くるぶしから膝、腰と左足を1本にして全体に体重を乗せ、そこから回転しながら左足を蹴っていたら、テンポの速いメジャーの投手には立ち遅れる。そのため左足にじっくり乗るという動作を省き、投手寄りに左膝を寄せてキープしたまま左サイドで重心を受け止めて始動する。そういう下半身の使い方をずっと指導されてきたという。
ところがこの形だと、間合いの長い日本の投手だと、どうしても待っていられず身体が前に出てしまっていた。
「日本の投手の投球の間合いを計りたい」と帰国後の練習、試合で語っていたのは、このことだったのだ。
試行錯誤を繰り返しながら実戦打席で自分の間を作ってきた。そして「この感覚だ」と嵌ったのが、原から中飛を打った瞬間だったのだという。
5回の第3打席。再び原と対戦すると、初球の内角ストレートを打って今度は二塁へのフライに打ちとられた。
一軍復帰で「打つべくして打った」本塁打
スタンドから漏れたため息。しかし第2打席の中飛と同じ感覚でスイングをできた筒香の中では、この瞬間に「これで大丈夫。調整は終わった」という確信があった。