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「打った瞬間に行ったなと…」筒香嘉智がDeNA復帰戦で“打つべくして打った”本塁打の真相「自分の中ではもう大丈夫だと思ったんです」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/08 11:06
復帰戦で逆転の3ランを放った横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智。活躍の裏にあった真相とは…
そして第2打席は中飛に倒れて迎えた第3打席だった。ヤクルト3番手の星知弥投手の150km、外角高めのストレートを逆らわずに逆方向に打ち返した。あと30cm……左中間フェンス最上段に弾み本塁打とはならなかったが、悠々と二塁ベースに立って復帰初安打を決めた。
「僕の中の1つのバロメーターが逆方向でもありますので、非常にいい感覚で最後の打席にも入れました」
まさに完全復活を印象付ける筒香本来の打球だった。
こんなに打席で動かされる筒香は初めて…
5年ぶりの古巣復帰が発表された4月20日以来、ファームで調整を続けてきた筒香だが、この日の一軍昇格には「まだ時期尚早」「もう少しじっくり調整してから一軍に上げるべきだ」という声が多くあったのも事実だ。
筆者も横須賀スタジアムでの二軍戦やDeNAの練習施設「DOCK」での練習を観て、正直、本来の姿にはまだ遠いように感じていた1人である。
ゆったりと大きな構えから、ボールを呼び込んで後ろ足を軸にスパッと回転してボールを飛ばす。そんな以前のイメージとは違い、変化球を打ちに行っては前に出され、真っ直ぐには詰まる。こんなに打席で動かされる筒香を見たのは初めてだと感じていた。
「日本の投手の間合いですね。日本の投手は間合いが長いんで。どうしても足を上げる時間が長くなる。そこにどう慣れていくのか……」
筒香本人も4月30日のオイシックス戦後にこう調整の難しさを語っていた。対戦相手のオイシックス・橋上秀樹監督も「まだもう少し調整が必要で(復帰は)交流戦前後になるんじゃないですか」と、このとき語っていた。4月20日から6試合出場した二軍戦の成績は17打数3安打の打率は1割7分6厘。数字的にも結果は出ていなかったのだ。
ところが5月5日に突然、翌6日の一軍昇格が発表された。5日の昼間には三浦大輔監督が「対応はまだ決まっていない」と語っていたのに、その直後に昇格決定が流れたことにもバタバタぶりが表れていた。
そんな経緯だけに、今回の昇格には「連休中の本拠地での復帰という営業面からの判断ではないか」という懐疑的な声も流れ、時期尚早論が渦巻いたのは仕方のないところだったのかもしれない。
「自分の中ではもう大丈夫」
だがこの昇格、実は筒香本人の決断であり、その決断をした瞬間が5月4日のヤクルトとの二軍戦の打席だったという。