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大谷翔平、規格外の「つなぐ」意識 ランナーがいても…“ドジャースの2番”として辿り着いた「セオリーにとらわれすぎない思考法」
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byNanae Suzuki
posted2024/05/06 17:26
開幕直後はランナーありの場面でのストライクの見極めを監督から課題として言及されていた大谷。その後、どのような意識に至ったのか
本能が向かうベクトルは、勝つこと以外にない
昨年12月14日、ドジャースへの入団会見に臨んだ大谷は、「勝つことが今の僕にとって一番大事なこと」と、真正面を見据えて言い切った。今年7月5日で30歳。「僕自身、野球選手としてあとどれくらいできるか、誰も分からない」とも言った。日米を問わず、ファンやメディアは、常に大谷の個人成績に注目し、一喜一憂する。もちろん、大谷にすれば、周囲の期待に応えたい気持ちは誰よりも強い。だが、本能が向かうベクトルは、勝つこと以外にない。
「優勝することを目指して、そこで欠かせなかったと言われる存在になりたい」
エンゼルス時代と同じ思いだとしても、大谷の言葉のニュアンスは、確実に変わっていた。
セオリーを超越した「つなぎ」の意識
打者として飛距離140メートル、打球速度190キロの豪快弾、投手としても球速160キロ越えなど、投打にわたって能力が傑出していることは、いまさら言うまでもない。
ただ、大谷ほど、チームの勝利に固執している選手も多くはない。ドジャース移籍以来、大谷のチーム打撃への意識は、より顕著になった。1番ムーキー・ベッツがメジャートップの出塁率.459(5日終了時)を残していることもあり、シーズン序盤は「引っ張り」の進塁打を意識するあまり、打撃フォームを崩す傾向も見られた。だが、デーブ・ロバーツ監督との話し合いを経たことで、セオリーにとらわれすぎない思考に活路を見出した。必ずしも外角球を強引に引っ張って走者を進めるのではなく、コースに対応する打撃スタイルもOK。ロバーツ監督が「ストライクゾーンをコントロールできるようになった」と評価する通り、四球を含め、大谷の「つなぎ」の意識が、打線全体の得点力アップにつながり始めた。
走者・大谷に見える「次の塁」への強い意識
バットだけでなく、これまで以上に、大谷の走塁への意識が高まったのも、偶然ではない。4月29日の敵地ダイヤモンドバックス戦では、1回1死一、二塁の状況で、二塁走者として盗塁を三度試みた。結果的にファウル2回と併殺打で遂行はされなかったものの、先制点を狙う意識と相手バッテリーを揺さぶる動きは、昨季までとは明らかに違っていた。