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大谷翔平、規格外の「つなぐ」意識 ランナーがいても…“ドジャースの2番”として辿り着いた「セオリーにとらわれすぎない思考法」
posted2024/05/06 17:26
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Nanae Suzuki
ユニフォームの色が赤から青に替わっても、大谷翔平の本能が変わることはない。
ただ、チーム状況、試合展開次第で、これまでは意図せずとも鎮めてきたはずの欲求が、ドジャースへ移籍したことに伴い、目に見える形のプレーや表情、細かな仕草として、無意識のうちに表に出る光景が増えているとしても、不思議ではない。
WBCを彷彿とさせる「カモーン!」
5月3日、本拠地でのブレーブス戦。タイブレークとなった延長10回裏、エンゼルス時代の同僚でもあるクローザーのライセル・イグレシアスから中前へ同点適時打を放った大谷は、一塁ベース上で、腹の底から「Come on!」と雄叫びを挙げた。ベンチの同僚を鼓舞するかのような、ハイテンションな姿は、昨年3月のWBCでの激戦を彷彿させるような気迫に満ちていた。その後、ドジャースは延長11回裏、新人アンディ・パエスの適時打で今季初のサヨナラ勝ち。ナ・リーグ東地区で首位を快走するブレーブス相手の「プレ・プレーオフ」とも言われた3連戦の初戦を劇的な勝利でものにし、大谷は3戦目でも2本の本塁打を放つなどカード3連勝に大きく貢献した。
活躍をよそに淡々とルーティンをこなす日々
昨年9月、右肘を手術し、今季は打者に専念する大谷が、昨季までのように投手として完封し、次の試合で打者として本塁打を打つようなことは、現時点ではかなわない。
だからといって、大谷にすれば、次の試合、次のステージへ向けて、最善を尽くす生き方は変えられない。調子を落とすと、室内ケージでクリケットのバットで気分転換のスイングを繰り返すこともあれば、投手としてのリハビリとして1日置きのキャッチボールを繰り返す。無駄にアクセルを踏み過ぎることなく、地道な作業を繰り返すしかない。たとえ、豪快な本塁打を打ったとしても、翌日には新たな1日が始まる。
目映いばかりの脚光の裏で、大谷の頑固にも映る愚直な作業は変わらない。自らのパフォーマンスを上げ、ドジャースが目の前の試合に勝つため、そして今後も勝ち続けるため、常に「次の試合につながれば」が口癖のようになった大谷は、日々、悔いを残すようなことはしない。