プロ野球PRESSBACK NUMBER
「プロってこんなもんなんだ」で大失速からの復活劇…《昨季33セーブ》ヤクルト“不動の守護神”田口麗斗が貫く「盛り上げ役」の決意
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/30 11:06
チームは5位ながら昨季、リーグ2位となる33セーブを挙げたヤクルトの田口麗斗。巨人から移籍後、ストッパーとして花開いた
「抑えは確かに大変な役目。展開によっては波があって、それを自分が全て変えられる訳ではないですけれど、抑えるべき場面が来たら、ここでメンタルを爆発させていいの? って。そういう時は思い切り(気持ちを)出すぞって。そんな感覚で投げています。
シーズンが終わって抑えという役目を傍から見てみたら、試合を締める重要なポジションであることは改めて感じました。本当に、すごくやりがいがある役割だと思っています」
巨人→ヤクルトに移籍後、チームはリーグ連覇
21年、22年と移籍してすぐにチームは連覇を果たし、田口のキャラクターはチームのエネルギーのひとつにもなっていた。勝利後の試合では勝った喜びをファンと分かち合い、共に進む。シンプルにただ勝とうではなく、勝つことの嬉しさを1試合1試合、ファンと共有し、笑いも誘う。選手に近い距離からチームの表情をファンに発信し続け、「マリモ」の愛称もすっかり定着した。
ただ、33セーブを挙げた昨季の悔しさは今でも忘れられない。
「抑え投手として良くも悪くもチームの勝敗に関わる立場にいさせてもらったのはすごく幸せなことですが、先発の時とは違って試合の終盤にチームと関わる分、良いことも悔しいこともありました。自分の数字は良かったけれど、やっぱりチームの勝利に関わりたいです。今季は最後に笑える試合が1試合でも多くなればいいですね」
1カ月ぶりに一軍に同行した田口は、3月19日のオープン戦の日本ハム戦に3番手で登板し、1回を無安打無得点に抑えた。開幕までに何とか目処が立った守護神の今季の目標は、45セーブだという。
「前人未到の数字を残したい。死ぬ気でやっていきます」
最後に、これからも盛り上げ役としてマウンドに立っていくのかを尋ねると、いたずらっぽく笑いながらこうこぼした。
「今年で29歳になる僕がやっていてもいいのかなとは思いますよね。若い選手がやってくれたらいいですけれど、若い選手はこういうことをやって結果が出なかったらどうしようとか気にしているみたいで。実際に出なかったら叩かれますからね」
それでも、田口はやってくれるような気がする。
春季キャンプは“自己改革”を試みたが故に少し回り道をする格好となったが、これもまた田口の経験値に加わった。2024年もヤクルトを明るく照らす“太陽”的な存在であることは間違いない。