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「プロってこんなもんなんだ」で大失速からの復活劇…《昨季33セーブ》ヤクルト“不動の守護神”田口麗斗が貫く「盛り上げ役」の決意
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/30 11:06
チームは5位ながら昨季、リーグ2位となる33セーブを挙げたヤクルトの田口麗斗。巨人から移籍後、ストッパーとして花開いた
批判もあれど…「ムードメーカー」を貫く理由
チームの守護神でありながら、今やチームに欠かせないムードメーカーだ。
「ムードメーカーになりきるのは自分自身を鼓舞するためでもあるのか」と問うと、田口は即座にこう返した。
「それもあります。ああやってふざけたからには、ちゃんと(野球を)やらないと。結果を残さなきゃいけないって、ヤクルトに来て1年目から少しずつやっているんです。何か爪痕を残そう、何か面白いことをしようって思ってきたんですよ」
高校時代から、その明るいキャラクターは際立っていた。やんちゃ気質で、時にはチームメイトをいじり、雰囲気を明るくする。13年秋、高校3年時に選出されたU18高校日本代表のワールドカップでも、報道陣のカメラを興味深く触って撮影を始めたり、練習中も大声を上げて盛り上げ役に徹したり、とにかく場をなごませる存在だった。
ただ、そういった一連のアクションを世間の全ての者が良かれと受け止めている訳ではない。
田口は表情を少し硬くしてこう続ける。
「重くは考えたくないですけれど、色んなことを言われてもどうこうとは思っていません。不快に思っている人が多いのならば自分が間違っていると判断して止めますけれど……でも、今のところは(止めるつもりはない)」
14年に広島新庄高からドラフト3位で巨人に入団し、ヤクルトに移籍して今年で4年目。田口はまずチームでの自分の地位を確立させるのに必死だった。
「(ヤクルトに来て)もともとプレッシャーはあまり感じていなかったんです。でも、ヤクルトに来てから練習に対する意識は少しずつ高くなりました。去年はプロ野球選手になってちょうど10年目だったというのもあるのですが」
巨人では高卒2年目から一軍マウンドを経験し、シーズン開始早々の4月11日のヤクルト戦で初勝利を挙げると、3年目には10勝、4年目には13勝を挙げた。階段を登るように結果を積み上げ、ジャイアンツでは貴重な先発左腕として君臨した。だが、5年目は2勝8敗と数字が急落した。「“プロ野球ってこんな感じなんだ”って安心していたところもありました」と振り返る。
翌年以降も一軍のマウンドに立つ機会はあっても勝ち星がなかなか伸びなかった。その後、21年3月に廣岡大志とのトレードでヤクルトへの移籍が決まった。
3年間在籍したヤクルトは「巨人とはまた違う明るさがあります。良い意味で抱え込まないチーム」だと田口は言う。そんな新天地で新たな活路として見いだしたのが“抑え”だった。