テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
大谷翔平21歳「そんな人は信用できませんよ」長年追う番記者が“唯一本気で怒られた日”の自戒…「節度を持った取材、できているか?」
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/03/23 11:01
2016年の大谷翔平。二刀流が花開き、自身はMVP、当時所属の日本ハムは日本一の栄光を掴む1年だった
帽子を深くかぶり、ネット裏近くに陣取ったのは、カブスの編成部門トップに立つセオ・エプスタイン編成本部長(現MLB相談役)。先にいたジェド・ホイヤーGM(現編成本部長)の隣に座り、スカウティングリポートをめくりながら、投球を熱心にチェックした。
キャンプ地を日本ハムに提供しているパドレスのAJ・プレラーGMのほか、レンジャーズはジョン・ダニエルズGM(当時)がテキサスから、ブルワーズは2015年までGMを務めたダグ・メルビン・シニアアドバイザー(現GM特別補佐)もミルウォーキーからわざわざ駆け付けた。この時期に編成部門のトップが1人の選手のために集結するのは異例で、大谷の注目度の高さが分かった。
後輩の「どう逆方向に飛ばすんですか?」の質問に…
大谷とチームメートの間で印象に残ったやり取りがある。キャンプ施設のベンチで後輩の石川亮が柵越えを連発する大谷に尋ねた。「どうやって逆方向に飛ばすんですか?」。すると、大谷は「(ボールに)4分の1回転をかけると、左中間へ飛ぶ。それが“大谷翔平流”」と笑った。
バットを体の内側から出し、スライス回転の打球を打つように、ボールを4分の1個分回転させるイメージ。2015年のキャンプ時にも話していた内容と同様で、ボールに強烈なスピンを与えることで、引っ張った時のような強烈な打球が飛ぶという理屈だ。理解できても体現できる野球選手が一体どれほどいるだろうか……。
私にとって初の米国出張は日本との打ち合わせに苦労した。
日本とアリゾナの時差は16時間。取材が一段落したアリゾナの夕方は日本の午前中で、スポニチ東京本社の編集局には誰も出社しておらず、打ち合わせがままならない。ある程度こちらの独断で記事テーマを決めるも、アリゾナで就寝する時間帯に編集局の方針が変わり、深夜から早朝にかけて書き直しを命じられることも度々あった。寝る時間がないわけではなく、寝るタイミングが重要。2週間のアリゾナキャンプ中、最後まで慣れることはなかった。
「そんな人は信用できませんよ」との苦言
当時の取材メモには残していないが、大谷に苦言を呈されたことがあった。