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「再生された選手に共通なのは…」《NPB参戦オイシックス新潟》監督は “野村再生工場”の腹心だった…いま明かす「遠山奬志&小早川毅彦」復活秘話
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byKYODO
posted2024/03/15 17:01
「再生工場」で名をはせた恩師の野村克也氏のもとで学んだ新潟の橋上秀樹監督。初参戦のNPBでどんな手腕を見せるだろうか
とりわけ、対松井は13打数ノーヒット。外角低めへの誘い球のスライダーと懐をえぐるシュートで手玉に取った。指導者のヒントで、人生が大きく変わった一例である。橋上は言う。
「何かしらのキッカケで、隠れていた部分がもう1回蘇ったりする。そんな感じがありますよね。声を掛けることでメンタル的な内面を変えていく、そうやって再生を図る選手もいました。野村監督は選手の性格によって、使い分けていたと思います」
橋上には強烈な印象に残っている試合がある。日本ハムでプレーしていた97年当時、4月4日の開幕戦、巨人対ヤクルト(東京ドーム)で、小早川毅彦が3打席連続本塁打の離れ業で、開幕戦4年連続完封を狙う斎藤雅樹を打ち砕いた。
小早川はその前年に広島を戦力外になっていた。崖っぷちに立たされた35歳の右翼へのアーチ3発は、あまりにも鮮烈な印象を与え、「再生工場」の象徴的なシーンになった。
「小早川さんには、配球を読む能力をレクチャーして浸透させました。今まで配球を読むタイプじゃなかった小早川さんに対して、技術的なところばかりに頼るのではなく、知恵を使う、配球を読むことで3打席連続ホームランに繋がったと思います」
「監督は気づかせ屋である」と言ったのも野村だったように、特長を見抜いて変わるキッカケを指し示すのも、指導者の腕の見せどころである。
「技術的にはまだ間違いなく通用します」
橋上はプロ1年目だった16年に打率.275で新人王に輝いた高山をこう評する。
「技術的にはまだ間違いなく通用します。小早川さんの話を出しましたが、今まで配球や読みに頼らなかった部分があるのであれば、ちょっと話してみて、興味を持ってもらうことも必要かもしれませんし、年齢的にまだ代打限定はもったいない。守備への意識をより高めるとか、まだまだ野球人生の幅は広がっていくと思います」
新潟では前巨人の三上朋也や元ヤクルトの中山翔太らもチャンスを窺う。もう一度、花は咲くだろうか。春はやって来るだろうか。敗者復活戦に挑む選手と、それを支える人たちのかつてないチャレンジがいよいよ始まる。