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「監督を取るか、女を取るか」野村克也はこうしてクビになった…沙知代のお説教「アンタ、なに教えてんのよ!」愛弟子が見たノムさんの素顔
posted2024/02/13 11:04
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
Sankei Shimbun
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「俺はこういうのが好きなんだよ」
グラウンド以外でも、佐藤道郎はよく野村克也の野球談義に付き合った。夜の街に繰り出そうかというときに、野村と宿舎のロビーで鉢合わせしてしまい、飲みにいけなくなることもあったそうだ。
「野村さんとの食事のときは、ピッチャーの爪は伸びすぎても切りすぎてもダメだとか、ランナーが出ているときのクイックモーションの重要性とか、野球の話ばっかり。大体の話は、私が日大三高時代に教わっていたことが多かったんですが、『それ習いましたよ』とは言えない。だから、『なるほど、監督、そうなんですか』と言うしかないんですが、すると野村さんも気分良くなって、また話が長くなるんですよ」
そんな佐藤を気に入ったのか、プライベートな食事でも、野村は佐藤に声をかけることが少なくなかった。
「急に野村さんが『ミチ、今日のお前んちの飯はなんだ。俺も行っていいか』と尋ねてきたことがありました。いいですよ、と答えて、私が住んでいるマンションの近所5家族くらいが集まって食事をしたんです。庶民的な漬物とかおでんとかを持ち寄ってね」
野村は佐藤のマンションに、当時の愛車リンカーン・コンチネンタル マークIIIを乗り付けてやってきた。南海のチームカラーである緑色に塗られた巨大な車体に、マンション住民はどよめいたという。
「ベントレーやリンカーンなど高級車に乗っていた野村さんですが、『俺はこういうのが好きなんだよ』と漬物やおでん、納豆をうまそうに食べるんです。当時はマミー(沙知代の愛称)とのホテルディナーが多かったけど、本当はこういうのが好きだと。野村さんは元々田舎育ちだから、そういう庶民的なものが好きなんでしょうね」
沙知代のお説教「こんな監督だから…」
野村から演劇に誘われたこともあった。そこで佐藤はグラウンド外での、野村のスター性を見たそうだ。