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拍子抜け!だったマルケスのドゥカティ移籍後初レース…「決勝4位」が意味する現状と「絶対王者」が真価を発揮するとき
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/03/13 11:01
ドゥカティでの初戦となった今季開幕戦カタールGP決勝を、マルケスは驚くほど淡々と走った
ここまでマルケスがドゥカティに乗った日数は、ウインターテストと開幕戦の3日間を含めて、わずか9日間である。それでも決勝となればマルケスらしい「サプライズ」に期待してしまうものだが、31歳になったマルケスは思いのほか慎重な走りを見せた。
ライダーとしてピークの走りが出来る時間はそれほど多く残っていない。それだけに「もう失敗は許されない」という気持ちで今季に臨んでいるだろうことは容易に想像がつく。加えて、ルサイル・インターナショナル・サーキットで開催されるカタールGPは、MotoGPで12年目のシーズンを迎えるマルケスが、これまで一度しか優勝していない苦手なサーキットのひとつ。それを思えば、マルケスにとって開幕戦のリザルトは十分な結果だったのかも知れない。
そんな現状をマルケスは冷静に分析した。
「まだ自分が望むような100%の状態で乗れているとは感じていないが、乗るたびに前進していることは間違いない。次のレースでどれくらい改善できるかを楽しみにしている」
型落ちマシンが抱える問題
実際、スプリントでは、マルケスがフロントに課題を抱えていることは十分に見てとれた。現在のMotoGPクラスはイコールコンディション化し、1秒差以内で15台前後が争う大接戦があたりまえだが、そうした状況でもっとも重要になってくるのがブレーキングである。ブレーキを制するものがMotoGPを制すると言ってもいいのだが、まさにそのブレーキングでマルケスは精彩を欠いていた。
決勝レースでもフロントに問題があり、マルケスが攻めきれなかったことは間違いない。加えて、「3位になったホルヘ(・マルティン)の方が、コーナー出口で自分よりうまい走りをしていた」と、表彰台争いをするためには、もう一歩前進する必要があるのだとも語った。
表彰台にあと一歩に迫ったマルケスの走りを、果たしてどう評価すればいいのか。「年齢的にピークを過ぎた」「もう昔のマルクではない」と過去のライバルたちは分析するが、だからこそ「やっぱりマルケスはすごい」というサプライズを期待してしまうのは僕だけだろうか。