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元祖・天才少女が苦しんだ誹謗中傷と世間の冷たい視線「まるでサーカス」「ボギーで観客が失笑」ゴルフ界から消えたミッシェル・ウィーの今
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAP/AFLO
posted2024/03/11 06:00
昨年の全米女子オープンを最後に第一線から退いたミッシェル・ウィー(2023年12月撮影、34歳)
「ハワイにゴルフの天才少女がいる」「地元で男子の大会に出ているらしい」という噂は、2000年代のはじめごろから、米本土まで伝わってきていたが、まともに取り合う米メディアは、当初はほとんどいなかった。
しかし、彼女が2005年の全米アマチュア・パブリック・リンクス選手権で男子選手たちを押しのけてベスト8進出を果たすと、「ミッシェル・ウィー」の名前はメディアに頻繁に登場するようになり、「男子に挑む女子選手」「天才少女がマスターズ出場を目指す」といった見出しが躍るようになった。
男子選手たちと伍して戦いたい、戦っていくと高らかにうたったウィーの宣言は、「勇気あるね」「面白いね」と好意的に受け取られた面もあるにはあった。だが、「生意気」「思い上がり」と批判され、野次も飛び、揶揄もされ始めた。
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比類なきゴルフの才能。恵まれた容姿。そして、望んだことにそのままチャレンジできる家庭環境、経済環境にあったウィーに対して、ジェラシーを抱いた人々もいたのではないかと思う。
激しい賛否両論が渦巻き、大きな話題になっていったからこそ、ウィーの下にはPGAツアーや下部ツアーといった男子の大会から推薦出場のオファーが殺到。2004年のソニー・オープンを皮切りに男子の試合に挑み、そのたびに大勢のギャラリーやメディアが押し寄せた。
ボギーに熱狂する観客「それ見たことか」
「ウィーが出る大会は、まるでサーカスだ」と言われるほどの大喧噪になったが、そのサーカス見学に訪れた人々の多くは、ウィーにエールを送るより、むしろ何かしらのハプニングを秘かに期待していた感があった。
ウィーがプロの男子選手をアウトドライブすると、大観衆はやんややんやの大騒ぎ。しかし、次打でその男子選手が見事にピンを捉えてバーディーを奪った一方で、ウィーがグリーンを外し、ボギーを喫すると、「それ見たことか」「力の差がわかっただろう?」と言わんばかりに冷ややかに笑った。